楽天・涌井が4年ぶり2桁勝利 トレード経験者が語る意義「移籍で変われる選手はたくさんいる」
涌井はここ3年間低迷も新天地・楽天で史上初の3球団最多勝へ独走
■楽天 9-3 ソフトバンク(30日・楽天生命パーク)
楽天の涌井秀章投手は9月30日、本拠地・楽天生命パークで行われたソフトバンク戦に先発し、8回6安打2失点。チームの連敗を4で止め、ロッテから移籍初年度にして4年ぶりの2桁勝利となる10勝目(3敗)を挙げた。最多勝争いでも単独トップを走っている。かつてヤクルトで外野守備の名手として鳴らし、現役晩年に楽天へトレード移籍。現役最後の2年間を過ごした飯田哲也氏は、「環境が変われば、選手は変われる。その好例」と称賛した。
この日、味方打線から1回に4点、2回にも3点の援護を受けた涌井は、ソフトバンク打線を寄せ付けない。8回を108球で乗り切った。飯田氏は「ソフトバンク打線は、序盤に大量リードされたことで、単純に打つ以外に作戦がなくなり、淡泊にならざるをえなかった。涌井ほどの実力者になれば、ビッグイニングだけを避ければいいわけで、それほど難しくなかった。四球を出さず、ボールを低めに集めて“安全運転”でした」と解説する。
かつて西武のエースだった涌井は2013年オフ、恩師と慕う伊東勤氏(現中日ヘッドコーチ)が監督を務めるロッテへFA移籍。最初の3年間で33勝を稼いだ。しかし、ここ3年は5勝11敗、7勝9敗、3勝7敗と低迷。昨季オフに金銭トレードで新天地を得た。その途端、2位のロッテ・美馬に2勝差をつけハーラーダービーのトップを走り、防御率もリーグ2位の3.06。鮮やかな復活ぶりである。西武時代(07、09年)、ロッテ時代(15年)に続いて3球団で最多勝獲得となれば、史上初の快挙だ。
飯田氏は「ユニホームが変われば、気持ちが変わる。特に涌井の場合は、楽天から望まれての移籍だったから、意気に感じるものがあるでしょう」と指摘。「環境さえ変われば実力を発揮できる選手が、他にもたくさんいると思う。チームの選手層が厚くてチャンスに恵まれないとか、首脳陣との相性がよくないとか、指導者の教え方が合わないとか、くすぶる理由はいろいろ考えられる」と言う。
実際、巨人で2軍もしくは3軍にくすぶっていた澤村が、今月に入ってからロッテに移籍し大変身。この日、9試合目の登板となった日本ハム戦で初失点を喫したものの、優勝争いを展開しているチームで、8回を担うセットアッパーの大役をこなしている。移籍ではないが、先発で結果が出なかった阪神・藤浪は9月26日以降、中継ぎで好投を続けている。
楽天は新規契約締め切りのこの日、巨人から金銭トレードで捕手の田中貴を獲得。今季開幕後のトレードは、巨人との間だけでも3件に上った。シーズン終盤、新天地を得た男たちの活躍が楽しみだ。
(宮脇広久 / Hirohisa Miyawaki)