ウインターリーグでも続く激しい競争、1軍を目指す若手に見えた“差”
ヤクルトのドラ1寺島は圧巻の3者凡退劇を披露
現在、台湾で開催中のアジアウインター・ベースボールリーグには、すべてのNPB球団が選手を派遣しているわけではない。日本ハムと広島は、これまで選手派遣なし。そんなこともあり、今季は選手数のバランスを考えて、本来はイースタンの西武がウエスタンに回っている。
各球団は11月20日前後まで秋季キャンプを行っていた。野球協約により、球団の管轄下で選手がユニフォームを着て練習や行事に参加できるのは、11月30日までと決められている。ウインターリーグは特例として12月以降もユニフォームを着て野球をすることが認められているが、球団によって考え方は異なっているようだ。
29日、台中洲際棒球場ではNPBウエスタン対NPBイースタンというNPBファーム選抜対決が行われた。
ソフトバンクは3人の育成投手を派遣している。巨人同様、選手層が厚いソフトバンクは、出場機会に恵まれない育成選手の実力を試したい意向があるのだろう。ウエスタンの先発を務めた中村晨も、その一人だ。192センチと長身の20歳で、今季は2軍でも登板がなく、3軍で2勝2敗、3.26という結果を残した。
この日の中村は制球が悪く、立ち上がりいきなり3四球を出して2失点。以後も4回まで毎回失点し、4回途中106球で降板した。中村にとってはアピールするチャンスだったが、期待に応えられなかった。
イースタンの先発は、楽天の菅原秀。今季1軍でも29試合に投げて1勝0敗1ホールド、防御率5.02を記録している。菅原は5回まで2失点と試合を作った。
打線はイースタンが好調。特にDeNAの選手が元気だ。4番に座った佐野恵太が、前日に続く本塁打。また、今年初打席初本塁打と派手なデビューをした細川成也も二塁打と三塁打を打った。一方、ウエスタンでは、4番の黒瀬健太(ソフトバンク)が181センチ、90キロの体を活かして、タイムリー二塁打を打った。
中盤からは両軍ともに中継ぎ投手を小刻みに繰り出したが、7回に投げたイースタンの寺島成輝(ヤクルト)が圧巻の投球を見せた。石垣雅海(中日)、山田遥楓(西武)を連続三振、茶谷健太(ソフトバンク)を遊撃ポップフライとし、わずか7分で3人を退けた。
寺島は大阪・履正社高校出身。2016年のドラフト1位で、大きな背番号の選手が多い中で「18」という番号は目立つ。マウンドさばきも堂々として、1年間で成長したことを感じさせた。
8-2とイースタンが勝利したこの試合で、MVPは2試合連続アーチのDeNAの佐野恵太だ。「僕は長打力が売りなので」と連日の活躍を喜んだ。昨年のウインターリーグでは、オリックスの吉田正尚が大活躍をして一躍注目されたが、佐野も来季へ向けていいアピールを重ねている。
この日のNPBファーム対決では、同じファームの選手でも「1軍一歩手前」と「3軍」の選手では、かなりの実力差があることを感じさせた。ファームの中でも厳しい競争が繰り広げられているのだ。
(広尾晃 / Koh Hiroo)