なぜ菅野が試合中にブルペン投球? 元メジャー右腕が読み解くチームへの影響
第5戦先発が有力視されていた菅野が第4戦中にブルペン投球「奇策中の奇策ではあるけれど……」
■ソフトバンク 4-1 巨人(日本シリーズ・25日・PayPayドーム)
「SMBC日本シリーズ2020」はソフトバンクが2年連続で巨人をスイープ(4勝0敗)し、4年連続日本一を達成して終幕した。25日にPayPayドームで行われた第4戦では、第5戦先発が有力視されていた巨人・菅野智之投手が7回からブルペン投球を行うシーンがあった。今オフにポスティングシステムを利用して大リーグへ移籍する可能性があるエースの行動の意味を、現役時代に日米通算234セーブを挙げた小林雅英氏が読み解く。
まさかの光景だった。1-4と3点リードされた巨人の7回の攻撃中、菅野がブルペンで力を入れて投げ始めたのだ。そもそも、翌日の先発が予想される菅野がベンチ入りしたこと自体、意外だった。
結局、その裏は6回から登板していたビエイラは続投。菅野に登板機会はなかった。小林氏は「奇策中の奇策ではあるけれど、展開によってはリリーフで登板する可能性があったということでしょう。その場合も、翌日の先発は菅野以外に考えられない。近年では珍しく、連投になっていたでしょうね」と語った。
その意味を「原監督としては、後がない試合でリードを許し、落ち込む一方のチームに奮起を促したかったのではないか。実際、菅野がブルペンで投げ始めれば、モニターを通してベンチの選手たちも知るわけで、何かしら思うところはあったでしょう」と見た。
それほど、エースやベテランの投球はチーム全体へ与える影響が大きい。この日のソフトバンクも然り。チーム最年長39歳の和田が先発。初回、1番の若林に右中間を破る二塁打、続く坂本に左翼フェンス直撃の適時二塁打を浴び、あっと言う間に先制され、なおも無死二塁のピンチだったが、そこから粘った。丸を一邪飛、岡本を内角高めの143キロ速球で空振り三振に。ウィーラーには7球を要した上で四球を与え、中島にはカウント2-2から9球連続ファウルで粘られたが、14球目のチェンジアップで空振り三振に仕留め、最少失点でしのいだ。
「和田の野球に対する真摯な取り組みは、普段からナイン全員が見ているでしょうし、この日も年長者の必死な姿を見て、心に来るものがあったはずです」と小林氏。実際、ソフトバンク打線はその裏に早速、柳田が逆転2ラン。2回にも女房役の甲斐が2ランを放ち援護した。和田は2回48球3安打1失点で降板し、リリーフ陣に託したが、チームを鼓舞した意味は大きかったと言えそうだ。
一方の菅野は、レギュラーシーズンでは開幕13連勝を含む14勝2敗、防御率1.97の抜群の成績を挙げ、最多勝と最高勝率の2冠に輝いたが、日本シリーズでは第1戦に先発し、栗原に先制2ランと2点適時打を許して6回4失点。千賀とのエース対決で投げ負けた。悔しさを胸に抱え、海を渡ることになるのだろうか。
(宮脇広久 / Hirohisa Miyawaki)