それでも選手はついていく 落合博満GMの非情さの裏側にあるもの

大幅ダウンにも選手たちに悲壮感はなかった

 背広にキリリとした眼鏡姿で選手に年俸を提示していく落合博満・中日GM(59)。契約更改では徹底してコストカットを行い、来季から監督を務める谷繁元信にも容赦しなかった。捕手として1億9000万円から6000万円ダウンの1億3000万円で契約を更改。落合氏はGM就任後、約8億円ものコストカットに成功した。大幅な人件費の削減は大きな話題を呼んでいるが、本人は「あなたたちには関係ない。さようなら」と言い残し、その場を去って行った。

 一見、冷酷に映るかもしれない。だが、大幅ダウンにも選手たちに悲壮感はなかった。渋るような選手はほとんど見られず、判子を押している。減俸されても「戦力と言ってもらえた」と話すなど、GMからの言葉に納得する選手も多かった。退団という形になってしまったが、大減俸を提示した井端弘和にも、落合GMは「戦力でない人間に金額は提示しない」と話すなど、最後まで選手としての価値を見定めていた。

 プロとして減俸という結果は何よりきつい。だが、それでも選手たちは落合博満についていく。

 落合氏が監督時代、ある中日球団関係者は言った。

「ファンサービスは勝つこと、と言い切って勝負にだけ徹する落合さんを評価しないフロントがいた。落合さんは勝つために不利になるような余計な情報をメディアにも与えなかった。だから、みんな煙たがっていましたね。でも選手からは、監督を否定する言葉を聞いたことがない」

 選手を一番に考え、厳しく、時に温かく接してきた。周りが驚くような作戦でチームや選手個人を鼓舞。ベンチで表情をあまり変えないのも、戦う選手たちに不安を与えないためだった。結果が出なければクビになるのがプロの世界。落合元監督はそれを理解させるためにコーチ、選手の血の入れ替えを行ってマンネリ化を防ぎ、チームを強くした。

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