トレード市場で渦巻いた各球団の思惑 世紀の対決となる可能性も出てきた「アスレチックスvsタイガース」と来季の優勝争いを見据える昨季王者

わらしべ長者の原理でチームを強化したアスレチックスGM

 7月31日のトレード期限が終了した。今季は例年にも増して「Last minute deals」と呼ばれる、駆け込みトレード成立が多かったように思う。とにかく大物が動いた。そして、ワールドシリーズ優勝に懸ける思いの温度差と、若手有望株を含めた資金力の差が如実に表れたように思う。

 トレード期限の到来を待たずして、サマージャ&ハメルの先発2人をカブスから獲得したアスレチックスは、最後の最後までアグレッシブだった。

 今回のトレード市場の目玉の1人と言われていた左腕レスターと左翼手ゴームズをレッドソックスから獲得し、代わりに大砲セスペデスをボストンへ送った。これで、アスレチックスの先発ローテーションは、レスター、サマージャ、グレイ、カズミア、チャベスまたはハメルという、他球団が羨む強力布陣に。低予算で戦えるチームを作ることに定評があるビリー・ビーンGMは、実際に大きな身銭を切ることなく、わらしべ長者の原理を使って、ワールドシリーズ優勝を狙えるチームを手に入れた。

 ビーンGMが抜け目ないのは、トレードを志願していた先発左腕ミローンを利用して、ツインズから外野手フルドを獲得した点にある。ゴームズは対左腕の打率は3割を超えているが、外野の広いアスレチックス本拠球場での守備はおぼつかない。だが、フルドの場合、昨季途中からアスレチックスでプレーした経験を持ち、広い守備範囲で中堅を守る実績がある。

 不満を持つ選手を新天地へ送ることで、計算できる失敗の少ない選手を取って穴を埋める。大きな動きをしながら、小さな穴の修繕も忘れないあたりが、ビーンGMが敏腕と呼ばれる理由の1つなのかもしれない。

 それにしても、アスレチックスがなぜセスペデスを手放したのかには多少の謎は残る。2012年に4年3600万ドルというアスレチックスにしては破格の大型契約を結んだセスペデスは、今季こそ打率2割5分6厘とやや低迷気味だが、ラインナップにおける存在感は抜群だ。

 モスやドナルドソンの打撃が好調な背景には、セスペデスが一発を警戒させるだけの打者であることも大きく関係しているだろう。セスペデスに比べると、ゴームズやフルドは破壊力に欠けるだけに、打線にどんな影響があるかは気になるところだ。

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