【特集・イチロー4000本安打の価値】第3回 デレク・ジーター編

早くからお互いを認め合っていた

 そして、そのイメージは対戦を重ねる度に強烈なものになっていく。

「いつも三塁側に浅めに守らなければいけなかった。バックハンドで獲ってから送球すると一塁に間に合わない。内野でも深い所に飛ぶと、一塁で差せなかったからね。内野安打が多かったから、常にプレッシャーを与えられていたよ」

 ヒットを打った後のイチローとは、二塁上でコミュニケーションを取った。会話が弾んだのは、早くからお互いを認め合っていたからだろう。

「いつも変なことを話しかけてくるんだ。何か英語を覚えるとすぐ使っていたよ。(内容は)ちょっと言えないけどね。面白いんだよ」。ジーターは懐かしそうにそう振り返る。

 そんな2人の関係は、昨年7月にイチローが電撃移籍し、ピンストライプを身にまとうようになってから、さらに近付いた。だが、チームメートになって以降も人としての印象はほとんど変わらなかったという。

「マリナーズ時代も(関係は)そう遠くなかったし、何度かオールスターでも一緒にプレーしたからね。ずっと偉大な選手だと思っている。彼は、一緒にいて楽しいヤツだ。みんなが思っているよりずっと英語もできるし、とってもいいユーモアのセンスを持っている。そこは、同僚になって改めて知ったことかな」

 同じユニホームを着て分かったことは、そんな人間性よりも、むしろ野球に対する姿勢だ。イチローは実に真摯に野球と向き合っていた。

「今は身近に見ることができるから、どれだけ彼が陰で努力をしているかが分かる。ワークエセック(労働の道徳)は敵のチームではなかなか分かりづらいからね。チームメートになって分かることだ。長くやるには才能が必要だけど、加えて彼はすごく努力家だ。オフの日も毎日球場に来て、打撃練習をして、スローイングをして、走って、ストレッチをして、大変な努力をしている。尊敬しているよ」

 イチローがなぜ毎日試合に出続け、これだけのヒットを重ねてこられたのか、ジーターにはその答えの1つがチームメートになって見えてきたのだ。

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