メジャーでマー君が陥る可能性が高い落とし穴とは? 日本人投手を苦しめる3つの要素
意外にも少ない、田中の1イニングあたりの投球数
ただ、実は「投げすぎ」として全米でも波紋を呼んでいる田中の投球数からは、意外なデータが出ている。今季、先発した試合での1試合辺りの平均投球数は、岩隈は93・2球。一方、田中は109・7球と16球も多かった。ただ、先発時の1イニングあたりの平均投球数は14・12の岩隈に対して、14・04と田中の方が少ない。1試合辺りの球数が多いのは、エースとして先発完投を求められた結果と言える。ちなみに、岩隈の14・12はア・リーグで最も少ない数字だ。
先発、中継ぎ、抑えと分業制が確立しているアメリカに行けば、これが減るのは確実。先発投手は100球での交代がメドとされているが、イニング平均14・04球でも7回まで98・28球で投げられる計算となる。マウンドを7回で降りるのと9回で降りるのとでは、疲労度は全く違う。
当初は体力面が不安視されていた岩隈が1年間ローテを守り続けたように、田中も中4日でマウンドに上がり続けることが出来るのではないか。平均7イニングを投げて先発投手の目安となる30試合に登板すれば、1年間の投球回数は大台の200イニングを超える。もちろん、打者の力の違いなど単純に比較できないことは山ほどあるが、データ上は、田中は先発投手に最も求められる要素を満たすのだ。
最後に1つ。田中に注意が必要なのは、感情のコントロールか。喜怒哀楽の表現、基本的には「喜」だ。日本シリーズでは、ピンチで巨人の元メジャーリーガー・ロペスを三振に打ち取り、大きなガッツポーズをして怒りを買った。もちろん、これは単純にピンチを乗りきったことへの喜びを表しただけだろう。あの場面でも、後ろを向いて感情を爆発させている。それでも、メジャーでは「挑発」と取られかねない。事実、ロペスをキレさせている。報復されれば、試合自体が壊れてしまう。闘志を押し出すのが田中のスタイルとはいえ、特にルーキーイヤーの来年は控えた方がいいだろう。
入札金が大きくなれば、それだけ周囲の見る目も厳しくなる。ただ、重圧に潰されない精神力は備えているだけに、細かいことを乗り越えられるかが重要になるかもしれない。まずは、日本と同じように力を発揮することが出来るかが鍵。黒田博樹、岩隈、ダルビッシュのように、高い適応力が求められる。
【了】
フルカウント編集部●文 text by Full-Count