FAで大竹寛の人気急騰 広島の選手が好まれる訳とは
広島の選手がタフになる理由
力強いストレートを投げ込めて、1年間フル回転してくれる可能性が高いのだから、先発不足のチームは喉から手が出るほどほしいだろう。
大竹に限らず、広島の選手はタフになっていく。それは屋外球場の夏を乗り越えているからだ。広島の夏は、他のセ・リーグの屋外球場(神宮、横浜、甲子園)より、気温が高く、蒸し暑い。さらに日差しも強く、風もない。その環境下で、広島の選手たちは最も暑い昼過ぎの時間帯にホームゲームに向けて練習を開始する。一方、広島に乗り込む他球団はナイターゲームの場合、少し涼しくなった16時頃から練習を始めるが、それにもかかわらず、コーチや選手は7月から9月に広島で行われる試合をあまり好まない。
広島の球団関係者が「巨人や中日が強いのがよく分かる。羨ましいよ」とため息まじりに言ったことがあった。先発投手陣は登板する日まで、走り込みの調整メニューが定められている。それを室内や涼しい人工芝で主にやる巨人や中日と、強い日差しや照り返しの中でやる広島とではスタミナの消耗度が明らかに違う。試合前に疲れてしまうことすら起こり得るのだ。広島以外の球団では、ベテランの先発投手がドーム球場で長い距離を走って調整ができるように登板日を設定したり、球場に合わせて練習メニューを組んだりすることもある。
つまり、広島カープの選手たちは、他球団よりも過酷な状況下で練習し、大竹のようにタフな選手へと成長していくのだ。もともと力のある選手は、体もメンタルも強くなり、飛躍につなげている。そして移籍となれば、新たに所属する球団は資金も潤沢で、練習環境もすべて上回っているから、モチベーションも上がり、広島在籍時よりもパフォーマンスや成績が向上していくのである。だからこそ、広島の選手は評価が高く、好まれる。
広島からFAで出ていった選手は6選手。反面、獲得した選手はゼロだ。このことからも分かるように、育てていく球団方針はぶれることはない。有能な選手たちが去っても、今年はクライマックス・シリーズに初進出。低コストで補強し、チームを強化することに成功している。大竹が移籍すれば大きな痛手だが、ドラフト1位の大瀬良大地(22)をはじめ、新たに主軸となる選手が必ず台頭してくるだろう。それが広島という球団のもう一つの特徴なのである。
【了】
フルカウント編集部●文 text by Full-Count