小笠原道大は新天地で輝きを取り戻すことができるのか?
出場機会が増えれば“復活”できるのか?
小笠原は2軍にいる間、本塁打やタイムリーを放っても、昇格はしなかった。次第に調子が落ちるだけでなく、シーズン終盤になると若手の起用も増え、出場機会すら失った。それでもいつ声がかかってもいいように朝から晩まで、練習量を落とさずにトレーニングを続けた。それは来季以降も現役でやるという強い意思の表れでもあった。
こうした実情だけを見れば、チーム方針や出場機会に恵まれなかっただけで、起用されれば復活は可能だという声も上がるだろう。だが、現実はそう甘くはない。小笠原はトレーニングで鍛え上げられた肉体が武器の一つで、体が丈夫とされてきたが、最近は下半身の怪我が続いていた。左太もも裏を痛めたり、肉離れを起こしたりすることもしばしばあった。バッティングはしなやかな振りで、強い打球を取り戻しつつあったが、野球はバッティングだけではない。
2010年まで主にプレーした三塁から一塁へとコンバートされたのも、守備範囲の狭さが不安視されてのことだった。そして度重なる怪我によって、必然的に足を気にしながらのプレーを余儀なくされた。走塁も全盛期ほどの歩幅はなく、脚も上がらない。これは、試合勘だけで取り戻せるものではない。現状の守備面と走塁面を中日首脳陣がどう判断するか。キャンプを通じて、起用法も決まってくるだろう。
何を持って復活か。それは与えられる役割によって変わってくる。落合GMは「復活」という言葉自体を否定した。出場機会を与えれば、それなりに数字を残すと期待している。小笠原が入団会見で「あらゆることにこだわらず、求められたところでやっていきたい」と抱負を語ったように、手薄となった左の代打の切り札として、勝負強さを発揮するかもしれない。また、外国人選手と一塁のレギュラー争いをし、定位置を獲得するには、まず怪我に強い肉体を取り戻すことも最重要課題となる。
幸運なことに、今年から中日のコンディショニングトレーニングコーチにはかつて日本ハムに所属していた時と同じコーチが加わる。小笠原にとっては自身の体をよく知る、心強い存在だ。「努力できる天才」と称されるベテランは「戦力」とみなしてくれた落合GMの眼力と期待に応えることができるか。ハードルは低くはないが、40歳の肉体は今後、再び輝きを放つ可能性を秘めている。
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フルカウント編集部●文 text by Full-Count