メジャーへの憧れを吐露 前田健太を成長させたダルビッシュ有との「18・44メートルの会話」

あえて手の内を明かしたダルビッシュ

 強い憧れを口にした。前田健太(広島カープ)が近い将来にメジャー挑戦をすることを明かした。

「野球人生は一度しかありませんから。いい状態の時にいきたいというのがある」

 今年25歳。選手として脂が乗っている時期にいきたい。10日の契約更改交渉を終えた後に、そう思いを打ち明けた。この発言により、前田健太は来年の今頃、今年の田中将大のように、移籍先が注目されていることだろう。

 マエケンが「昔から憧れていた」メジャーリーグ。広島の大先輩である黒田博樹がヤンキースの軸として活躍し、アメリカが少しだけ身近になった。そして、尊敬するダルビッシュ有の存在も大きかった。3年前の2010年5月15日の交流戦、広島対日本ハムで2人は投げ合っている。前田は9回6安打で完封勝利を挙げたのだが、この1勝よりも、大きなものを手にしていた。今でも語り継がれるほど野球界では有名な逸話だが、ここで改めて振り返ってみたい。
 
 その一戦は広島での試合だったため、投手が打席に入った。ダルビッシュは、右打席に立った前田に対して、自分が持つストレート、ツーシーム、スライダー、フォーク、チェンジアップを丁寧に投げこんだ。軌道を見せるように、教えるように、投げた。普通、5つもの球種を1回の打席で投げるようなことはしない。

 ダルビッシュはこの時の対戦のことを「これからのセ・リーグを背負ってもらいたい投手だから」と話している。つまり、将来の日本のエースになる男と見込み、あえて手の内を明かしたのだ。自分の持つ全球種を「体で感じ取って欲しかった」と、マウンドから本塁ベースまでの18・44メートルの間の軌道で、伝えようとしたのである。

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