甲子園出場校を後押しした3人の元プロ野球選手たち
各地域に増えてきている元プロ野球選手のコーチ
惜しくも2回戦で日本文理に敗れた東邦では日本ハムや中日で投手だった木下達生氏(26)が大学に通いながら、ボランティアで指導している。木下氏は2005年の春の選抜大会に東邦のエースとして出場し、ベスト8に進出。2006年から10年まで日本ハム、2011年は中日、2012年はヤクルトでプレー。現役引退した後に恩師である東邦の森田泰弘監督の勧めで、資格回復をし、コーチを務めてきた。
昨年からは愛知東邦大の人間健康学科に在籍。今年の4月から授業後にグラウンドで投手を指導。強気のピッチングが売りだった木下氏は「ストレートがどこまで通用するか試してこい」とバンビ2世を後押しした。藤嶋は元々、愛知県内では有名な中学生だった。短い期間でさらに成長を遂げて、甲子園を沸かせる投手となった。この秋以降の飛躍も楽しみである。
東邦を破り、ベスト4まで進出した日本文理では、エース・飯塚悟史が準決勝まで1人で投げぬき、タフネスぶりを発揮。低めにコントロールされた力強い直球は圧巻だった。飯塚も今年2月から資格回復をしたOBでヤクルトでプレーした本間忠氏(37)の指導を受け、全国トップレベルの投手がさらに進化を遂げた。
本間氏は2000年から7年間、ヤクルトで投手としてプレー。その後は独立リーグのアルビレックス新潟で投手コーチをしていた。資格回復をし、同校の投手たちの指導を開始。元プロの視点から飯塚に体の使い方、変化球をどのようにして織り交ぜていくか、コーナーをどうしたらついていけるのかという点などの技術指導を行った。
飯塚が力任せの投球ではなく、緩急を使って「大人のピッチング」を見せることができたのは本間氏の助言が大きい。本間氏自身に甲子園出場経験はないが、後輩たちがその夢をかなえ、全国制覇まであと少しのところに迫っている。
昨年のプロアマの制度の改定で、3人のほかにも、元プロ野球選手のコーチは各地域に増えてきている。今年に入って元プロ選手がコーチに就任したこの3校が甲子園に出場したという事実は、彼らの手腕と無関係とは言えないだろう。今後もOBの元プロのコーチが増えていけば、プロを輩出した学校はさらなる強化が図れる。
一方でプロを輩出していない学校との力関係がさらに明確になってしまうことも懸念されるが、中には自分の母校とは関係のないチームで指導をするコーチも出てきている。甲子園未出場の学校をその手で強くして聖地にやってくる、というサクセスストーリーが出てくることにも期待をしたい。
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フルカウント編集部●文 text by Full-Count