大谷の二刀流を成功に導いた、日本ハムの絶妙な“投打配分”
登板機会と打席数は一方が増えれば一方が減る
ところで、大谷の成績を見るときに持っておきたいのは、限られた出場機会をうまく投打に割り振れているのか、という視点だ。
大谷は基本的に投手としてのローテーションを優先し、6~9日のインターバルの中盤で主に指名打者として出場した。その結果、能力はゆうにレギュラークラスであるにもかかわらず打席数は234に留まった。つまり「155回1/3の登板」が、大谷の打席数を減らしたことになる。
同じように、投手だけに専念していれば、エースクラスの大谷はあと2~3試合投げていてもおかしくない。同じように「234打席」が登板機会を減らしていたことになる。
ここで、もし投手に専念していたら大谷が登板していたであろう投球回を177回、打者に専念していたら立っていたであろう打席を620と仮定する。これはパ・リーグ各チームの先発1番手クラスの平均投球回と、144試合フル出場した野手の打席数の平均から設定している。
大谷は
177回-155回1/3=21回2/3
という計算より「21回2/3の登板」と引き換えに「243打席」の機会を得ているとわかる。そして
620打席-234打席=386打席
という計算より「386打席」と引き換えに「155回1/3」の機会を得ているとわかる。この交換が正しいかどうかに注意を払う必要がある。
打者としての成績と投手としての成績の比較は、貢献を得点の形にすることで可能になる。
大谷の防御率(2.61)とリーグ平均防御率(3.63)の差から、大谷は9イニング当たり1.02点、1イニング当たり0.11点ほど平均的な投手よりも少ない自責点でピッチングできると計算できる。
もし投手に専念していたら、余計に投げていたはずの21回2/3で
0.11×21回2/3=約2.4点
ほどの価値をつくることができたことになる。これは2つ目の図表中の左のグラフの赤い線で記した部分だ。