金子千尋の国内FA権行使で想定される今後の動向 国内外を巻き込む大争奪戦の可能性も

国内FA権行使とポスティングシステムの併用となれば史上初

 今オフ、最大の注目株と目されたオリックスの金子千尋投手が、FA申請期限だった11日に、国内FA権の行使を表明した。

 今季、両リーグ通じて最多の16勝をあげ、最優秀防御率との2冠を達成し、先発投手として最高の名誉とも言われる沢村賞も獲得。名実ともに日本を代表するエースとなった右腕は、12日から日米野球を戦う侍ジャパンに参加中に「前にも言いましたが、すべての可能性を考えたいなと思ったので、こういう決断になりました」とコメント。これを各メディアが一斉に報じた。

 国内FA権の行使。だからといって、国内他球団へ移籍すると決まったわけではない。金子は球団サイドに「FA宣言させていただきます。時間がないので、ひとまずそうさせてもらいます」と話したという。

 これまで、金子はメジャーへの移籍希望をオリックス側に伝え、今年のワールドシリーズも強行日程で視察した。目指す優先度として高いのは、メジャー移籍と見るべき。となると、今後、オリックスにポスティングシステムでのメジャー移籍を求めていくことになるだろう。国内FA権の行使とポスティングシステムの併用は史上初。国内外を巻き込む大争奪戦となることは間違いない。

 ただ、メジャー希望を持ちながら、なぜ国内FA権行使なのか。これには、ポスティングに向けたオリックスサイドへの牽制という狙いも、見え隠れする。ポスティングは球団側がイニシアチブを握る。いくら、選手がメジャー移籍を希望したところで、球団側がノーと言えば、その思いはかなわないものなのだ。

 FA権は、08年からは国内FA権と海外FA権の2段階になった。国内FA権取得までは、06年までのドラフト入団選手は1軍登録日数8年、07年以降のドラフト入団高校生選手が同8年、同大学・社会人選手は同7年、海外FA権は全選手同9年となっている。

 国内、海外FA権となった08年以降、ポスティングシステムでメジャー移籍したのは西岡剛(現阪神)、青木宣親、ダルビッシュ有、田中将大。この4人はすべて、国内FA権取得前に海を渡った。

 これには、球団に選手の夢を叶えてあげたい思いがある一方で、別の思惑も透ける。翌年ないし、2年後に国内FA権を取得し、他球団、ましてや同一リーグに移籍してしまって強敵になるくらいならば、高額な入札金(現在の新システムでは上限2000万ドル=約23億円)を得た方がいい……。こう考えるのは至極、当然の流れだろう。

 金子の場合に照らし合わせてみよう。トヨタ自動車から05年にオリックスに入団。一軍登録日数が累計8シーズンに達し、今季国内FA権を取得した。海外FA権は順調にいけば、来季、取得出来る。遅くとも、来オフにはメジャー挑戦が可能。ただ、金子は31歳。若いうちに、1年でも早くメジャーの舞台に挑戦したい思いがあったはずだ。

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