金子千尋の国内FA権行使で想定される今後の動向 国内外を巻き込む大争奪戦の可能性も

苦しい立場に立たされたオリックス

 客観的に見れば、オリックスサイドには、苦しい状況か。今後も、球団は残留交渉を続けるとしているし、残留も、もちろん選択肢。金子自身にも「オリ愛」はあるはずだ。ただ、残留した場合、FA権を一度、行使したため、FAでのメジャー移籍には権利再取得が必要で、それは早くても4年後となる。その前にメジャー挑戦したければ、ポスティングシステムを利用するしかない。

 一方、フリーエージェント規約第13条(ポスティング手続の不採用)にはこう定めてある。

「獲得球団は、国内FAの権利を行使したFA宣言選手について、同選手が当該国内FAの権利を行使しなかったとしたら、海外FA資格を取得したであろう時点までは、日米間選手契約に関する協定8項ないし12項所定のポスティングの手続を採らない」

 この規約からすると、金子が国内の他球団に移籍後も来オフのポスティングシステムの利用は可能となる。また規約上、基本的には翌年の年俸は現状維持が上限となるが、出来高等は制限がない。今回の国内FA権行使で他球団が手を挙げ、インセンティブ等で好条件を提示し、かつ、1年後のポスティングでのメジャー移籍を条件に付けたら、どうなるだろうか。オリックスからすれば、2桁勝利確実のエースが他球団へ渡ることに加え、入札金を得る機会を与えることになる可能性も出てくる。

 推定年俸2億円の金子が今オフにオリックスから他球団に移籍した場合、オリックスは移籍先の球団に人的補償と1億円の金銭補償、もしくは金銭補償の1億6000万円を要求できるが、金子の残留、あるいは最大20億円超のポスティングの入札金と比べれば、メリットは小さいと言わざるを得ない。

 逆に他球団からすれば、2桁勝利を計算でき、なおかつ、オフには入札金で最大約20億円を手に出来るのだから、条件面をある程度譲歩してでも手を挙げるかもしれない。そしてオリックスが獲得に乗り出す他球団への移籍を阻止するために、今オフのポスティングの利用を認めることも十分考えられる。

 今回の決断は、国内FA権と海外FA権という2段階の制度の“歪み”が露呈したともいえる。金子は、広島の前田とともに、メジャーで高く評価されている。それは、今季の登板試合のほとんどにメジャーのスカウトが入れ替わり立ち替わり、足を運んでいることからも分かる。早くも、国内球団から争奪戦参戦の声も上がり始めているという。メジャーか、残留か、国内移籍か。金子の去就から、目が離せなくなってきた。

【了】

フルカウント編集部●文 text by Full-Count

RECOMMEND

KEYWORD

CATEGORY