スーパーボウルMVPのブレイディはMLB入り目前だった!?

MLBスカウトは「この男と契約していたら、NFLの歴史を台無しにしてしまうところだった」

 元エクスポズで、現在はイチロー外野手の加入したフロリダ・マーリンズでスカウトを務めるジョン・ヒューズ氏は「これは我々のぴったりの素材だと思ったね。彼は強肩で、捕球も巧みだった。左利きの打者で、ある程度のパワーもあった。誰もがミシガン大に進学すると考えていたけどね」と語っている。

 荒削りながら、送球、捕球、打撃で高い評価を手にしていたブレイディがメジャー挑戦に心変わりする可能性もあるために、エクスポズは3人のスカウト態勢で視察を継続。1995年のMLBドラフト後には、ブレイディはサンフランシスコのキャンドルスティックパークでエクスポズが行ったワークアウトにも参加したという。

 当時、エクスポズで新人王候補に選出され、現在はアナウンサーに転身したJ・P・サンタンジェロ内野手らメジャー選手も参加。霧深く、極寒で強風が吹きすさぶスタジアムで、ブレイディが場外弾を放つなどパワーを見せたことも記事では紹介されている。悪条件下でもパフォーマンスを発揮できる能力を示したブレイディは、ロッカールームでの取材対応なども実に堂々としたものだったという。

 ヒューズ氏は「すでにプロの世界のロッカールームでずっと過ごしてきた選手のようだった。記者の前でも自慢げになるわけでもなく、テレビで見た本人とまったく同じ人間だった」と回顧。さらに「ここまで何年もスカウト活動を続けてきたが、トムは私が見た中で未だに最も感銘的な高校生選手だ。人間として、いかに成長するかという部分においても、彼がどれだけ成熟したかというのは明確だ。だが、何かが劇的に変化があったわけではない。すでに存在感を備えていたんだ」と話している。

 2003年にペイトリオッツで2度目のスーパーボウルを勝ち取ったブレイディの晴れ姿をテレビで見たヒューズ氏は、友人にこう語ったという。

「もしも、私がこの男と契約していたら、NFLの歴史を台無しにしてしまうところだった」
 
 NFL史上最高級のQBとなったブレイディがキャッチャーとしての道を選択していたら、MLBでどんなキャリアを歩んだのだろうか。

【了】

フルカウント編集部●文 text by Full-Count

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