MLBで高騰する“キューバ株” 契約を巡る課題と国際ドラフトの可能性
「インターナショナル・ドラフト」実施の論争が加速か
先日、アリゾナ州で行われたメディアデーに参加した際、ロブ・マンフレッド新コミッショナーがこの契約に関しての意見を求められた。
「あの年齢かつ成長段階にある選手の契約としては、明らかに非常に高額なもの」と驚いた表情を見せたが、一方で「間違いないと思った逸材を獲得するためには、各球団がアグレッシブな獲得競争も辞さないという姿勢の表れだ」と状況を分析。今回の過度とも言える大型契約が、これまで折に触れて盛り上がってきた「インターナショナル・ドラフト」実施の論争を加速させることになるだろう、と予測している。
「海外選手の獲得というトピックは、今後大きくなり続けるものだと考えている。現行のドラフトに海外選手も加えるのか、現行のドラフトに加えてインターナショナル・ドラフトを行うのか、いずれにせよ何か1つの基準をひねり出す必要があると誰もが考えることだろう。おそらく次回2016年に行われる選手会との労使交渉の席で検討課題の1つとなるはずだ。最近結ばれた数々の契約が、基準設定の必要性を物語る形になった」
経済力のある球団が、中南米出身の若手選手を根こそぎ青田買いしないように、2013年度から海外アマチュア選手との契約に対する契約ボーナス金限度額を前年の勝率により定めたが、予算のあるチームは余分な出費を厭わない。コミッショナーも「我々が予想していたほどの効力を発揮していない」と話しており、次回の労使交渉で「インターナショナル・ドラフト」の導入が決まらない場合、少なくともこの制度の改正が行われることは間違いない。
キューバ人選手の場合、2016年の労使交渉以前に、アメリカ合衆国政府とキューバ政府との外交問題がどう変化していくかにも大きな影響を受けるだろう。だが、何か新たなルールが制定されるまで、しばらくはキューバ株の高騰が続きそうだ。
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佐藤直子●文 text by Naoko Sato
佐藤直子 プロフィール
群馬県出身。横浜国立大学教育学部卒業後、編集プロダクション勤務を経て、2004年にフリーとなり渡米。以来、メジャーリーグを中心に取材活動を続ける。2006年から日刊スポーツ通信員。その他、趣味がこうじてプロレス関連の翻訳にも携わる。翻訳書に「リック・フレアー自伝 トゥー・ビー・ザ・マン」、「ストーンコールド・トゥルース」(ともにエンターブレイン)などがある。