【小島啓民の目】“プロ注目”の選手はどこが優れている? スカウトが重視するポイントとは
なぜ「投げる」ことに関する指導が難しいのか、幼少期の指導の重要性
正しいキャッチボールとは、「正確さ」を意味しており、目標に向かって正確に投げる力があるとか、次の動作(投球)に移行する準備をしながら正しく捕球をするなどのことです。このキャッチボールの精度が低いとミスが出る確率が高くなります。
高校野球の強豪高校とそれ以外との力量差は、この部分の差が大きいと言えると思います。
では、なぜあえてプロ野球のスカウトが「キャッチボールを正しくできる」という単純な回答をしたのでしょうか?
プロ野球に入ってからでもキャッチボールの精度を上げていく練習が必要というような選手レベルでは、プロの世界で長くはやっていけないという理由ではないかと思います。それに加えて、実は、野球指導で一番難しいのがキャッチボール、特に投げる技術の指導と私は思っています。
投げるという行為は、
(1)本人の感覚的な部分に大きく左右される
(2)メンタルに大きく左右される(イップスなどが起きる要因)
この点において指導が難しいと言えます。当然ながら、正しい投げ方(フォーム)の基本はあるのですが、最後は上記の2点が影響してきます。
アマチュア時代に、何千、何万回と繰り返し、長い年月をかけて一度身についたフォームや感覚をプロ野球に入ってから変えるとことは至難の業とも言えます。したがって、最低でもキャッチボールを正しく出来る選手、というのがスカウトの間の条件となっているのだと思います。
野球は、結局、一にも二にもキャッチボールです。そういった意味では、幼少のころの教えが今後を大きく左右します。プロ野球など高いレベルを目指すのであれば、まずはキャッチボールを身につけることが大切です。アマチュアの指導者の責任は大きいですね。
【了】
小島啓民●文 text by Hirotami Kojima
小島啓民 プロフィール
1964年3月3日生まれ。長崎県出身。長崎県立諫早高で三塁手として甲子園に出場。早大に進学し、社会人野球の名門・三菱重工長崎でプレー。1991年、都市対抗野球では4番打者として準優勝に貢献し、久慈賞受賞、社会人野球ベストナインに。1992年バルセロナ五輪に出場し、銅メダルを獲得。1995年~2000年まで三菱重工長崎で監督。1999年の都市対抗野球では準優勝。日本代表チームのコーチも歴任。2000年から1年間、JOC在外研修員としてサンディエゴパドレス1Aコーチとして、コーチングを学ぶ。2010年広州アジア大会では監督で銅メダル、2013年東アジア大会では金メダル。侍ジャパンの台湾遠征時もバルセロナ五輪でチームメートだった小久保監督をヘッドコーチとして支えた。2014年韓国で開催されたアジア大会でも2大会連続で銅メダル。プロ・アマ混成の第1回21Uワールドカップでも侍ジャパンのヘッドコーチで準優勝。公式ブログ「BASEBALL PLUS(http://baseballplus.blogspot.jp/)」も野球関係者の間では人気となっている。