「スター不在」が導いた頂点 なぜ敦賀気比は北陸勢初の頂点に立てたのか

“自分たちは強くない”という意識、一番最後まで練習していたのは“満塁男”松本

 確かに、昨年の敦賀気比打線はすごかった。主将を務めた3番・浅井洸耶(現青学大)、高校日本代表に入った4番・岡田耕太(現駒大)を筆頭に、高校でもトップクラスの強打者がズラリ。当然、打ち勝つ試合が多かったが、半面、脆さもあった。

 今年はその中軸がごっそりと抜け、戦い方を変えざるを得なかった。昨夏からエースを務める平沼を投打の中心に据え、最少失点に抑えて接戦をモノにするスタイルが自然と出来上がった。

 個々のレベルで言えば、去年より落ちるのは否めない。その思いがあったから、冬は打撃マシンで4~5秒という短いスパンで打ち込むなどスイングの鋭さを磨き、例年にない練習量で肉体的にも精神的にも追い込み続けた。

「去年はチャンスを作って確実に走者を還すことができた。今年はチャンスを作っても、決め切れないことが多かった」

 優勝を決めた直後、主将のリードオフマン・篠原涼は、現チームへの反省を口にした。それでも、優勝できた理由は練習に裏打ちされた勝負強さにあるとも明かした。

「冬にずっとやってきたから、本当の『ここぞ』という場面で1本が出てくれた。いつも練習を一番、夜遅くまで残ってやっていたのは、松本でしたから。そういう風にしっかりやれば結果は出るんだと改めて思いました」

 決して自分たちは強くない――。そこからの反骨心が今年のチームを、春夏12度出場の名門で誰も成し遂げることのできなかった日本一に導いた。

【了】

フルカウント編集部●文 text by Full-Count

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