【小島啓民の目】WBC前哨戦のプレミア12、日本に必要な「洞察力」
国際大会で際立った長野の洞察力、呉昇桓から放った一発
もし落ちるボールを何度振っても当たらない選手がいた場合には、日本のように1球、他の球種を挟んでなどと裏をかく配球は必要なく、続けた方が痛い目に合わずに済むということもあります。もちろん、投手の癖を盗むような手段を講じなくても、日本のプロ野球は相手を攻略できるレベルにありますが、最後の最後は、その争いになってくる部分もあるでしょう。
プロ選手は、多くの外国人選手との対戦を日頃から経験していますので、先日のU18の代表チームのように戸惑うようなことはないと思いますが、世界には驚くような投げ方をする投手や球種、日本では考えられないプレーをする選手が多くいます。そういった意味では、ペナントレースと違い、1発勝負の世界大会では、試合中に観察する集中力と対応力が要求されます。
印象に残っている国際大会があります。2006年11月に行われた第15回アジア大会。社会人・大学生のチームが韓国のプロ集団と戦った試合がありました。
私はこの時、コーチを務めていました。主力選手には現在、巨人で活躍する長野久義選手がいました。彼は当時まだ日大の選手でしたが、相手投手に対する洞察力は素晴らしかったです。
第2戦の韓国戦。7-7の9回裏、走者一、二塁のシーンで今は阪神でクローザーをしている呉昇桓投手がどんどん強気にストライクを取りに来るのを見抜き、難しいボールはファウルで逃げて、その結果、右中間席へサヨナラ3ランを放ちました。打撃センスだげなく当時から見抜く力に非凡さを感じました。
ある程度の対戦経験から来る読みやカンは、一発勝負ではなかなか使えません。観察力や洞察力を頼りとし、感性でプレーをすることが大切となります。短期間の大会ですから好不調の波がはっきりと表れることもありますし、活躍できない選手も出てくるでしょう。
色々な意味で、世界大会を知る小久保監督がこの大会をどう切り盛りしていくのかが非常に楽しみです。頑張れ、小久保ジャパン!
【了】
小島啓民●文 text by Hirotami Kojima