全球団でスペイン語通訳常駐へ―MLB通訳事情、あの川崎も「つけた方がいい」
キューバ人選手の受け入れに向けても意味のある一歩に
マイナーで過ごす時間が短いほど、英語を学ぶ時間は少なく、メジャーにスムーズに順応するためには通訳が必要となる。中南米出身の選手たちが「じっくり育てる」対象から「即戦力として期待される」対象に変化している証だろう。
あまり知られてはいないが、これまでも明らかな即戦力として期待される中南米選手には専属通訳がついている。一昔前で言えば、ホセ・コントレラス(元ヤンキース、ホワイトソックスほか)。最近で言えば、ヨエニス・セスペデス(メッツFA)、ヤスマニー・トマス(ダイヤモンドバックス)、アレクセイ・ラミレス(ホワイトソックスFA)ら。特に、キューバ出身選手の場合、文化や社会制度の違いが大きいため、通訳の役割に限らず生活全般のアドバイザー的人物がつくことが多い。
通訳はただ単に言葉を訳すだけではなく、文化や慣習の違いを踏まえながら、選手と選手、選手と監督、選手とフロントオフィス、選手とメディア、選手とファンの橋渡し役に徹する。言葉の翻訳以上に、言葉の背景だったり行間だったりを誤解のないように互いに伝えることが主な仕事と言えるだろう。
アジア出身選手に限らず、中南米出身の選手であっても、チームメイトやコーチに頼らず、こういった手助けを専門にしてくれる通訳がいることは心強いはず。国交回復に伴い、今後その数が一段と増えるであろうキューバ人選手の受け入れに向けても、意味のある一歩を踏み出したような気がする。
佐藤直子●文 text by Naoko Sato
佐藤直子 プロフィール
群馬県出身。横浜国立大学教育学部卒業後、編集プロダクション勤務を経て、2004年にフリーとなり渡米。以来、メジャーリーグを中心に取材活動を続ける。2006年から日刊スポーツ通信員。その他、趣味がこうじてプロレス関連の翻訳にも携わる。翻訳書に「リック・フレアー自伝 トゥー・ビー・ザ・マン」、「ストーンコールド・トゥルース」(ともにエンターブレイン)などがある。