今季もセ・パで新指揮官誕生 出身ポジション別で見る監督采配の違いとは
野手出身監督の「継投は投手コーチに任せます」は本当? 最も違いが出るのは準備段階?
一方で、投手出身ならではのメリットも当然、あるという。野口氏は「今は継投が分業制だから『どこで誰を投げさせる』というような適材適所の起用はしやすいと思います」と説明する。では、反対に野手出身の監督は“専門外”である投手起用や継投面での判断をどう下しているのか。野手出身監督がよく使用する「継投は投手コーチに任せます」というフレーズは真実なのか。野口氏は言う。
「(投手起用を投手コーチに任せるかは)人によりますよ。(阪神時代の)岡田さんは全て自分でやってましたからね。『◯◯いくぞ』『◯◯出来てるのか』と。それで『(想定と違う投手の)◯◯が出来ています』と言われると、『ここで◯◯はないやろ』といった感じで、結構揉めたこともありましたね」
岡田彰布氏は阪神、オリックスで通算8年間にわたって監督を務め、581勝を挙げた。野口氏は、阪神在籍時に岡田氏に指導を受けた5年間を回想し、出身ポジションに関係なく、自分の考えを采配に反映させる監督像の一例を紹介した。
一方で「(阪神時代の)星野さんは完全に(投手コーチの)佐藤義則さんに任せていましたから。『◯◯ができています』と言われたら『そうか!』という感じでした」と岡田氏の前に阪神を指揮していた星野氏について振り返る。「投手出身の方だからどうとか、野手出身だからとかではなくて、ついている人材(コーチへの信頼)によるんじゃないかなという気がしますけどね」と分析。監督自身が全ての決定権を持ちたいタイプか、そうでないタイプかという性格面での違いもありそうだ。
また、野口氏は「やっぱり試合中どうのこうのというよりも、準備段階で変わってくる気がします」と、ファンの目には映らない裏側にこそ監督の違いが出ると指摘する。中でも、捕手出身の名将・野村克也氏の元でプレーしたヤクルト時代を回想し、以下のように語った。
「野村さんみたいに捕手出身の方だと、緻密なミーティングをして『こういうときはこう動く』とデータを使って色々考えていました。バッテリーミーティングを練習の前にやるのですが、(本来は)バッティング練習で一番最初に打たなければいけないのに、よく最後に古田さんと一緒に打っていたことがありましたよ」
球界を代表する捕手・古田敦也とともに1軍に帯同したヤクルト時代には、ID野球と称された野村克也氏の綿密なミーテイングが練習前にあったため、「なかなかグラウンドに出て行けなくて、よくバッティングコーチの伊勢さんに怒られました」と野口氏は笑う。