議論高まるストライクゾーン改正問題の是非 試合時間短縮は本当に必要か
敬遠四球改正にはイチローも警鐘、今後もわずかな時間削減への取り組みが続く?
敬遠四球の改正に関しても、マーリンズのイチロー外野手が地元紙マイアミ・ヘラルドに「敬遠は試合の一部であり、変えるべきではない。野球が変わってしまわないか心配」とコメントし、警鐘を鳴らした。
近年、大リーグはイニング間の交代時間に上限を設け、打者が打席を完全に外す行為に罰金を科すなど試合時間短縮のために様々な策を講じてきた。その結果、昨季の試合平均時間は前年度よりも6分ほど短くすることに成功。だが、米メディアによると、今季は開幕から7分ほど伸びていることから、さらなる改革に取り組んだとみられる。
だが、実際にベースボールファンがそれを本当に望んでいるのか疑問が残る。時間短縮のための新ルールが導入された2015年の1試合平均の観客動員数を見てみると、前年度から100人弱の微増。試合時間が年々右肩上がりとなっている2010年以降も観客動員数は主に微増傾向にあり、大きな減少もみられていない。
テレビ中継への影響はあるだろうが、「野球が変わるかもしれない」リスクのあるストライクゾーン改正がどこまでファン獲得につながるのか、不透明だ。それでも、今後もわずかな時間を削減するための取り組みが継続されるだろう。次のルール改正では「守備側が三振を奪った際のボール回しを禁止」、「打者が打席に向かう際に流す音楽をなくす」、「セブンスイニングストレッチで流すTake Me Out to the Ball Gameの短縮バージョン作成」などの提案がされるかもしれない。
それよりも、審判によってストライクゾーンが大きく異なることの方が大きな問題ではないか。1試合に1度あるかどうか分からない敬遠四球の簡易化でわずかな短縮をはかるよりも、公平なコールを徹底できる審判教育に力を入れて、無駄な抗議や退場を減らす道を選んだ方が建設的に思えてならない。
【了】
伊武弘多●文 text by Kouta Ibu