ビシエドとバンデンの実力は? ホーナー&郭泰源との比較で見えてくるモノ
稀有な連勝記録達成に欠かせない投手としての能力とは
さて、そんな郭の記録を塗り替えたバンデンハークは、どんなピッチングをしていたのだろうか。
連勝期間の22試合の奪三振率(9イニング当たりの奪三振数)は、4.43だった郭の倍以上の10.51。与四球率(9イニング当たりの与四球数)は郭の1.24に及ばないものの、やはり低く1.76と1点台である。
バンデンハークの記録も2年にまたいで達成されたものだが、来日初年度と2年目では投球スタイルに変化が見られる。今季の連勝期間中は、三振を奪うペースが大幅に低下し、初年度は11.61だったのが8.46へ、与四球率は2.13から1.08となっている。三振も四球も両方減った形だ。
球数が120球を超えた試合は1試合もなく、P/IPは17.25から14.36へと初年度に比べ1イニング当たり約3球も節約している。これによって投球回を伸ばすことに成功していたようだ。初年度は5、6回でマウンドを降りた試合もあったが、今季の連勝期間中、7イニングを投げきれなかったのは1試合だけだった。
こうやってみると、稀有な連勝記録を達成した郭との間には、共通点といえそうな部分がある。投球数をうまく節約し、自らのパフォーマンスを一定以上に保ったまま責任投球回を乗り切るやりくりの技術と、随所で使っていたとみられる相手打者を封じ込める豪球の存在だ。
ただ、連勝記録が途絶えたのち、バンデンハークの勢いはやや衰え、蓄積した疲労の解消のため6月1日登録抹消された。1イニングの投球数を抑え、結果的により多くのイニング消化につながったと見られる今季の投球スタイルは、初年度のような投球ができない中での苦肉の策だった可能性もある。
今季のバンデンハークは、三振奪取と強く関連するストレートの速度や全投球に対する空振りの割合が下がっている。フライを打たれる頻度も高まり、その結果被本塁打も増えている。今季の投球は、打者を圧倒した初年度の投球に届く内容ではないのは明らかだ。休養を通じて、バンデンハークはどこまでパフォーマンスを取り戻せるのであろうか。
DELTA プロフィール
DELTA http://deltagraphs.co.jp/
2011年設立。セイバーメトリクスを用いた分析を得意とするアナリストによる組織。書籍『プロ野球を統計学と客観分析で考える セイバーメトリクス・リポート1~4』(水曜社刊)、電子書籍『セイバーメトリクス・マガジン1・2』(DELTA刊)、メールマガジン『Delta’s Weekly Report』などを通じ野球界への提言を行っている。最新刊『セイバーメトリクス・リポート5』を2016年5月25日に発売。集計・算出したスタッツなどを公開する『1.02 – DELTA Inc.』も開幕より稼働中。
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水島仁・DELTA●文 text by MIZUSHIMA,J. DELTA