「プロの世界は甘くない」 西武・森友哉はなぜ不振から復活したのか

1軍で感じる確かな手応え、「やっと自分の間合いで打席に立てるようになった」

 翌日、残留組の森は、通常練習後に再び赤田コーチとの個別トレーニングを実施した。ノーステップ、サンドバックを叩き込む、バランスボールに座ってのティー打撃など、徹底的に下半身をいじめ抜いた。赤田コーチは語る。

「年間通じて結果を出すために、上体を上げて負担を減らすという考え方はわかります。でも、そもそも、その選択が違う。下半身に負担がかかって途中でバテてしまうなら、“負担を減らす”のではなく、“バテない体力をつける”という選択をすべき。要は、楽をする方法を選んだというわけです。それで通用するほど、プロの世界は甘くはありません」

 厳しいようだが、至極まっとうな指摘であることは、成績が証明している。
事実、昨季との下半身力の差を痛感し、さらに意識的に強化に努めてからは、2軍戦でも急激に成績を伸ばして26試合出場、打率.309、6本塁打、21打点で、セ・パ交流戦を機に5月31日に1軍再登録。交流戦では、打率382で全体2位の成績を残したのをはじめ、抹消時.209だった打率も.290まで上がり、状態を上げつつある(7月5日終了現在)。

 昇格後、昨季から続けてきているメディシンボールを使っての下半身の回転、強化のためのトレーニングは以前にも増して精力的に行い、前出のトレーニングコーチも、「1軍に戻ってきて、下半身が強くなって、上体も下がってきている」と、印象を語る。

 ただ、本人は「上体を上げよう」と決めた意識を変えたつもりは「全くない」と断言。「なぜか、自然と(重心が)去年みたいに下がっちゃってるんですよ」と、苦笑いを見せる。それでも、「少し、結果が出始めたことで、気持ち的にはだいぶ楽になりました。やっと自分の間合いで打席に立てるようにはなっています」。確かな手応えを感じている。

 誰にも真似できない、低い重心から鋭く振り抜くフルスウィングは、例え空振りでも、「うぉ~!」と、思わずスタンドから感嘆の声が湧くほど、見る者を魅了する。自身の中で鬱積していた迷いも晴れた。いよいよここから、若きスター・森友哉の本領発揮が見られそうだ。

【了】

上岡真里江●文 text by Marie Kamioka

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