三浦とベイスターズの幸せな6年契約 大投手に負けない貢献見せた25年間
03年の6年契約後に迎えていた“全盛期”
図の上の部分のグラフは、三浦が各シーズンでどの程度の投球の質(FIP/ Fielding Independent Pitching/注釈参照)で投球回を重ねてきたかを示したものだ。FIPは、おおむね防御率と似た感覚で見ることができる数字なので低いほどよい。三浦が多くのシーズンで3.00?4.00の間に数字を収めているのがわかる。圧倒的なものではないが、一定の内容で辛抱強くイニングを重ね続けた三浦の野球人生がよく示されている。
そして指摘しておきたいのは、三浦が球団と結んだ2003年から2008年にわたる6年契約についてだ。日本では珍しい長期契約だが、この間に三浦が記録したWARは23.4に達しており、05年からの3年間で記録した5.7、5.0、4.8という数字は三浦がキャリアで記録したシーズンベスト3にあたる。
長期契約を結んだ投手が直後に全盛期を迎え、ローテーション上位クラスを、2億円を割る年俸(推定)で長らく抱えることができたのだから、球団にとっては非常に有効な契約だった。三浦の能力を適切に評価した球団の英断だったといえる。
出来高契約も含まれていたようだが、年俸が頭打ちになることから、三浦にとっては不都合だったと考えることもできる。だがそれでも、29歳という若くはない年齢で、将来を見据えプレーに集中できる環境を得られたことは、結果的に三浦のパフォーマンスを高め、選手寿命を延ばすことにつながったはずだ。三浦が戦ってきたと伝えられている慢性的な肝機能障害への対処についても、長期契約がプラスに働いた部分はあったのではないだろうか。
長期契約で選手、球団双方がWin-Winになるケースはなかなか見られず、その結果、日本のファンの長期契約に対する印象はあまり良くないようにも映る。だが、三浦とベイスターズが結んだ6年契約は、互いの事情を汲んだ、幸せなケースだったと考える。
あくまで選手が求めた場合に実現するものだが、安定した環境が能力を伸ばすことにつながりそうな選手を的確に見極め、長期契約を用いることは、編成におけるアドバンテージを作り出しうる。うまく活用する球団がもっと増えてもよいのではないだろうか。
(注)ここで投球の質の評価に用いているFIP(Fielding Independent Pitching)は、奪三振、与四死球、被本塁打から算出する指標。バックを守る野手の守備力やアンラッキーなヒットの生まれ方の偏りを均した環境で記録するとみられる推定防御率を意味する。防御率や被打率では見えてこない、投手の基礎能力を削り出した数字となる。
DELTA http://deltagraphs.co.jp/
2011年設立。セイバーメトリクスを用いた分析を得意とするアナリストによる組織。書籍『プロ野球を統計学と客観分析で考える セイバーメトリクス・リポート1~3』(水曜社刊)、電子書籍『セイバーメトリクス・マガジン1・2』(DELTA刊)、メールマガジン『Delta’s Weekly Report』などを通じ野球界への提言を行っている。最新刊『セイバーメトリクス・リポート4』を2016年3月27日に発売。算出したスタッツなどを公開する『1.02 – DELTA Inc.』(http://1point02.jp/)も2016年にオープン。
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