【森脇浩司氏の目】勢いだけではないことを証明したDeNA ヒーローはいても戦犯いない好試合に
手に汗握るナイスゲームであり、それ以上に不思議なゲーム
どちらが勝利を手にしてもおかしくない素晴らしいゲームだったと思う。8回無死一、二塁から巨人・山口が見せたフィールディングは見事だった。投ゴロを「1-6-3」の併殺を狙わず、「1-5-3」で完成させた。前者での併殺なら2死三塁となりパスボールや一つのエラーで決勝点が入る状況だ。だが、後者で奪った二つのアウトで2死二塁の状況を作った。ワンヒットで確実に点が入る2死三塁とではプレッシャーのかかり方も大きく変わってくる。このケースのセオリーだ。当たり前のように見せた何気ないプレーだったが、普段からの練習、準備が生み出した素晴らしいプレーだった。
ジャイアンツはホームゲームでありながら、なぜ主導権を握れなかったのか。DeNA先発の石田は頑張ったが、6回同点でマウンドを降り、ロールプレイヤーの梶谷も開始直後に失った(※初回死球で交代)。一方、早々と登板した巨人2番手の大竹は完璧なまでの投球を見せ、死球を受けた村田が殊勲の石田をマウンドから引き摺り下ろす同点ホームランを6回に放った。巨人は4、9回、DeNAは8、11回といずれも無死からの出塁は2度、9回球界最高峰走者の鈴木の牽制死は痛いが、DeNAの8回無死一、二塁バント失敗からの併殺打も手痛い。11回表にゲームは再度動いたが最小失点で切り抜けたこともあり裏の攻撃がすんなり終わる確率は極めて低くなる。両チームともにブルペンは最善を尽くした。
勝負事において流れという言葉を頻繁に耳にするが、この日の試合は本当に手に汗握るナイスゲームであり、それ以上に不思議なゲームでもあった。勝ち運の優劣か、今まで解らなかったことに気付けた貴重な時間だった。ヒーローはいても戦犯はいない。最善を尽くしたがジャイアンツは負け、梶谷が早期交代となったベイスターズはトレーナーも含め全員がヒーローだった。