打者・大谷の“弱点”は…“低めに落ちる球”と“大谷シフト”が攻略のカギ?

“柳田シフト”に続く“大谷シフト”も有効か

 別の対策として“大谷シフト”を提案したい。大谷はゴロ打球が多い打者である。ゴロ率(全打球に占めるゴロの割合)は、48.0%、パ・リーグ全打者の平均のゴロ率は47.7%なので、とりわけ高いわけではない。

 だが、一般的にスラッガータイプの打者はゴロ率を低く保ち、フライを多く打つ。例えばDeNAの筒香嘉智やヤクルトの山田哲人はそれぞれ33.1%、35.4%と低いゴロ率を記録し、高い確率で打球に角度をつけている。そうした傾向から考えると、大谷は長打力を備えている割に、ゴロが多い打者だ。

 これはソフトバンクの柳田悠岐に通じるものがある。柳田と大谷はゴロが多いだけでなく、痛烈な打球スピードと足の速さで、そのゴロを安打にするケースが非常に多い。そうした柳田のゴロ安打を防ぐため、パ・リーグの多くの球団が採用したのが、遊撃手を二塁ベースの後ろに置くなど、全体的に内野手をライト方向に寄せる“柳田シフト”である。柳田は春先、このシフトの網に何度もかかり安打を失った。

 大谷に対してもこれが有効になるはずだ。今季の大谷のゴロ打球は、センターからライト方向への打球が76.4%と全体の4分の3を占める。その中でも一塁寄りではなく二塁寄りの打球は、全体の47.3%と非常に多かった(図3)。今季、大谷が三塁ゴロで凡退したケースはわずか2度。走者がいなければ、三塁手を定位置に置くことに固執する必要はない。

 そこでMLBで多くの球団が採用する、三塁手をライトの前に置き、センターからライト方向へのゴロを処理する人数を増やすシフトを敷けば、効果が生まれる可能性がある。もちろん、シーズン中に試されていなかった以上、実施される可能性は低いが、多少の守備陣形の変更は行ってもよいはず。大谷が投手の対策だけで打ち取ることが難しい打者になっているのは疑いようがない事実。打ちとるために、なりふりかまわず策を講じるべきではなかろうか。そもそも大谷の“二刀流”こそが、奇策中の奇策なのだから。

DELTA http://deltagraphs.co.jp/
2011年設立。セイバーメトリクスを用いた分析を得意とするアナリストによる組織。書籍『プロ野球を統計学と客観分析で考える セイバーメトリクス・リポート1~3』(水曜社刊)、電子書籍『セイバーメトリクス・マガジン1・2』(DELTA刊)、メールマガジン『Delta’s Weekly Report』などを通じ野球界への提言を行っている。最新刊『セイバーメトリクス・リポート4』を2016年3月27日に発売。算出したスタッツなどを公開する『1.02 – DELTA Inc.』(http://1point02.jp/)も2016年にオープン。

【了】

DELTA●文 text by DELTA

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