FAはステータスの象徴 日米で異なるFA制度への理解
FA権は競争力が高い野球界で生き抜いた勲章
だが、シカゴ・カブスはハメル投手のためを思ってチームオプションを行使することはしなかった。何故なら今オフのFA市場は先発投手が手薄と言われており、ハメル投手はおそらく複数年契約を獲得できる見込みがあることが予想される。もちろん試したい若手が存在することから生まれたカブスの“余裕”があってのことだが、選手のためを思った決断であることは間違いない。その証拠として、数日後ハメル投手はシカゴの地元紙「シカゴ・トリビューン」で1ページの広告スペースを買い取り、ファンやフロントに対して感謝の言葉を述べた。
ハメル投手のケースは、2002年にドラフト指名されたタンパベイ・レイズでキャリアを歩んできたわけではないため、日本のケースと比較するのは完全にお門違いであるかもしれない。ただ、これは球団側と選手側が円満にFAの権利を行使した一例であるのではないかと思う。
FA権とは、競争力が高い野球界でそれぞれの選手たちが生き抜いてきた証であり、1969年にカート・フラッド氏が身を削って得た自然と発生する権利となっている。その歴史が語り継がれているからこそ、選手たちもその重要性を理解しているのだろう。
今後日本でも“涙のFA宣言”がオフの風物詩にならず、ステータスの象徴となり、FA権を笑顔で行使する選手たちの姿を見ることが出来ればと切に願う。
(記事提供:パ・リーグ インサイト)
「パ・リーグ インサイト」新川諒●文