入団当時の寮長が明かすヤクルト山田哲人の素顔 才能はなぜ開花したのか
大きかったセカンドへのコンバート、真中監督の決断
また、セカンドへのコンバートも大きなターニングポイントだったと松井氏は振り返る。履正社高では強打の遊撃手として甲子園でも活躍し、ヤクルトに入団してきた山田だが、真中満監督が2軍監督時代の2013年にセカンドへのコンバートを決断。そこから力を発揮し始めた。松井氏は続ける。
「(入団当初)山田はショートとして一流になると思っていました。ただ、一番の欠点が、技術的にはスローイングでした。今でも苦労している。我々(2軍スタッフ)はショートとして育成して、なんとか大成してもらいたいという思いが強かった。スローイングを修正できないかとか、そういう方向で考えていました。そこで視野を変えたのが真中監督。当時2軍監督で、ショートからセカンドにコンバートしたのが真中監督でした。これが大ヒットだった。山田の一番の成功の要因は、セカンドに変えたこと。大きなターンングポイントだったと思います。
我々としたら、まだ経験を積んで、ショートでも教えることがあるだろうし、教えないといけないという思いがみんなあったと思うけど、それを真中監督が変えた。その視点が一つの大きなポイントだった。指導者としては、『若いから何とかショートで』と思うものです。ただ、それを3年目に変えて、それがきっかけになって、打ちだした。山田は1年目のプレーオフでもメンバー入りしていて、ブレークしてもらいたというのはあったんだけど、成長の度合いがちょっと停滞期を迎えたのが2年目だった。ただ、そのあとはもうグングンと上がっていった」
スローイングの不安がなくなり、精神的な負担も減った山田は、打撃で圧倒的な力を発揮。シーズン193安打、そして2年連続トリプルスリーと偉業を達成し続けている。今季もシーズン途中まで快調に飛ばしていただけに「怪我しなかったら40-40(40本塁打、40盗塁)。そういう可能性もありました。来季以降は40-40に期待したい」と松井氏は言う。
「例えば、糸井(阪神)の方が潜在能力は凄い。体は大きいし、スライディングして次の塁に進む時のステップなんか、彼のような大きな男がやるようなステップじゃない。ああいうところを見ると身体能力はすごい。山田も糸井のように全ての能力を発揮するようになれば、もっともっとやれる。そこに山田の凄さがある」
来季は3年連続トリプルスリー、そして日本球界初の「40-40」へ。山田の成長曲線に終わりは見えない。
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フルカウント編集部●文 text by Full-Count