銀次と枡田…楽天と共に成長してきた2人 入団当時の2軍監督が明かす原点

松井氏が見る枡田と銀次の違いとは?

「慎太郎を2軍のセカンドで起用する時には、沖原とか吉岡とか鷹野といった実績のあるベテランをベンチに置いて使うことになります。こちらはある程度、(ベテランに対して)“知らん顔”してやっているけど、彼らの思いを考えたら、思うところがあった。ただ、慎太郎はそんな中でタラタラ、タラタラやっていた。時代の流れだから、若手に変わっていくのは当然なのですが、慎太郎にもベテランの思いを背負ってほしかった。下手くそでもいいから一生懸命やりましょうと。納得させるようなことをベテラン連中に思わせればいい。それで『お前が出るためにどれだけベテランに負担をかけているんだ』とキツく怒ったんです」

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楽天・銀次(左)と枡田慎太郎(右)【写真提供:東北楽天ゴールデンイーグルス】

 枡田は2012年に星野仙一監督から評価され、1軍で79試合に出場、打率.295の成績を残すと、13年は死球での骨折で一時離脱しながら、86試合出場で打率.272をマーク。得点圏打率.364と勝負強さを見せ、球団史上初の日本一に大きく貢献した。

 松井氏は昨年、枡田が地元紙のインタビューで「今になって松井さんの言っていたことが分かる」と話していたことを耳にしたという。「よかったなと思った。うれしかった」。故障の多さに悩まされ、昨季までは思うように出場機会を伸ばせていないが、入団当初に2軍で経験したことが、その後の野球人生に生きていることは確かだろう。

 一方、松井氏が「全く逆」と表現するのが、枡田の同期の銀次だ。「真面目」だという好打者は「当時からバットに当てるのがうまかった」。2009年限りで楽天を退団し、ヤクルトに復帰した松井氏は、イースタン・リーグで対戦する際に「どうやったら銀次を抑えられるのか?」と聞かれ「真ん中に投げておけ」と答えたという。「いろんな球種で難しいところに投げたら、絶対にヒットを打たれる。だから『真ん中に投げてフルスイングさせておけ』と」。それだけ、当時から銀次の打力は際立っていた。

 しかし、キャッチャーとして入団してきた銀次は、守備の問題もあり、2010年まで1軍で出場機会はなかった。2年目(07年)のオフのフェニックスリーグで、松井氏は銀次を内野手として起用。「素晴らしいプレーをした。『あいつは将来、内野やな』と思ったんです」と振り返る。ただ、打力を生かすための「コンバート待望論」が沸き起こっても、松井氏は捕手からポジションを動かすことをしなかった。

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