上原、菅野、ボルダリング!? 「勝負の年」楽天・美馬の新たな取り組み

好不調の振れ幅を小さく『「美馬のために」って言ってもらえるように』

 社会人時代から知るトレーナーの勧めもあり、このオフに挑戦したのがボルダリングだ。フリークライミングの一種で岩や壁を登るボルダリングは、東京五輪の正式種目にも採用された。このスポーツは指先の強化はもちろん、全身のトレーニングになったという。

「結構腕がパンパンになるんですよ。普段のトレーニングで鍛えても、そこまで筋肉痛にはならない。でも、ボルダリングは相当きついです。指先が鍛えられるのと同時に、頑張って脚を伸ばしたりするので、股関節の動きもよくなるんですよ。何よりも楽しみながらできるのがいいですよね。やってよかったなって思います。結局、行けたのは4回くらいですけど、今度のオフも取り入れたいなっていうくらいよかったです」

 充実のオフを過ごして臨む今季。先発陣では、西武からFA移籍してきた岸孝之に次ぐ2番目の年長者となった。若手選手が台頭する中で、美馬は密かに「ホント今年は自分の中では勝負の年です」と位置づける。まず狙うは「届きそうだけど全然届かない」ままの2桁勝利だ。

「僕は助けてもらって勝っている試合が多いんです。2桁勝つ投手って、勝利を自分で引き寄せている。序盤は打たれても、そこから我慢して我慢して、8回9回まで投げられるピッチャー。僕はダメだと5回6回で降りることが多くて。1試合1イニングでも長く投げられれば全然違うと思うんです。

 いい時と悪い時の振れ幅が大きいんですよね。試合中に(気持ちが)切れちゃっている、みたいに言われることがある。自分ではそんなことはないんですけど、そう見えちゃうとチームに頑張ってもらえない。そういう姿を見せずに、好不調の振れ幅を小さくしていきたいです。

 そのためにも、今取り組んでいるフォームでいけば、大分違ってくるかなって気がしてます。ボール球が減って、もっとストライクゾーンで勝負ができるかなって。今年は何でこんなにクリアにできているのか分からないんですけど、自信を持ってやっています。

 試合で結果を出しながら、『美馬のために(勝とう)』って、みんなに言ってもらえるように頑張ります」

 楽天が日本一となり、美馬がシリーズMVPに輝いてから4年。あの時の興奮と感動を再び味わうためにも、30歳右腕は勝負をかける。

【了】

佐藤直子●文 text by Naoko Sato

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