なぜ、DeNAには若き才能が次々芽吹くのか 勝負師ラミレスの「眼力と信念」

“切なき宿命”背負い、奮闘する「監督・ラミレス」…球団幹部「意外な姿ではない」

 大前提として、“切なき宿命”の球団でもある。

 歴史をひも解くと、現役選手では内川聖一(ソフトバンク)、村田修一(巨人)、最近でいえば山口俊(巨人)と主力に育った選手がFAで球団を去った。資金力のある球団に脂の乗った30歳前後の選手を奪われ、若手を使わざるを得ない。高田GMは「方向性として、日本ハムや広島のように、選手が抜けても若い選手が出てくるチームを作りたい」と掲げているが、ドラフト会議の指名は編成サイドに一任。球団が獲得してきた金の卵を、フラットな目で見て育てていく。

 そんな理由があるにせよ、若いチームにおいてラミレス監督が選手と取るコミュニケーションには、鉄則がある。

「私は選手の批判をメディアを通じて決してしない。思うことがあれば、自分の言葉で本人に伝えたい」

 実際、メディアが伝えるラミレス監督のコメントにネガティブなものはない。背景には、経験が少ない選手たちにとって間接的な発言で萎縮させず、能力の100%を発揮させる狙いがあるだろう。CS進出争いがかかった昨季終盤。「多少のミスをしてもとがめない。うちのレギュラーは半分が今年なったばかりの選手たち。これ以上、監督の立場の私が『頑張れ』と言ってもプレッシャーになるだけだから」との言葉は、指揮官の信条が伝わる象徴的なものだった。

「若手育成」の宿命を背負い、「眼力と信頼」によって奮闘する指揮官。かつて能天気なほどの明るいパフォーマンスで沸かせていた「ラミちゃん」からすると、「監督・ラミレス」は意外な姿かもしれない。しかし、ある球団幹部は、こう言っていた。

「皆さんは意外と思うかもしれないし、実際によく言われる。でも、球団としては選手時代から5年もの付き合いがあった。だから、今の姿は決して意外なものではない」

 そう考えると、昨季の躍進も若手の台頭も偶然ではないように思える。もちろん、網谷、細川は10代であり、佐野も経験は少ない。シーズンで戦力になるかというと未知数だが、日替わりのように出現する新星に明るい未来を想像し、一喜一憂できるのが春季キャンプの特権だ。

 19年ぶりのリーグ優勝へ、ラミレス監督が就任2年目を迎える今シーズン。「ひょっとしたら、ひょっとして……」。期待でファンの胸が膨らむのも、無理はない。

【了】

フルカウント編集部●文 text by Full-Count

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