指示待ち人間は作らない…活気あるベンチの声、兵庫「公立の雄」社高の試み
山本監督「仲間同士はやっぱり会話や声で繋がっていてほしい」
昨今は、メールやLINEというコミュニケーションツールが取り巻く環境の中、人と人が繋がっていることも多い。言葉を伝えるにしてもLINEで済ませてしまう者がほとんどなのが現状だ。便利なツールであるのは確かだが、山本監督からすると、そんなツールこそがコミュニケーション能力を上げるための足かせになっていると考えている。
「相手の表情を見て、周囲に目配りできてこそ、本当のコミュニケーションだと思うんです。だから、仲間同士はやっぱり会話や声で繋がっていてほしい。試合に限らず、普段の生活からもそういう意識づけをしていきたいと思っています」
試合後のベンチ裏も賑やかだった。淡々と片づけを済ませるのではなく、道具を整理しながら今日のプレーについて振り返り合う。選手同士の掛け合いもにぎやかで、これほど声にして試合のことを語り合える学校はあまり見たことがない。
社高は兵庫県の公立高の高校野球の中心的存在でもある。もともと公立勢に力のある高校が多い兵庫県は、私学に限らず公立にも好投手が点在しており、私学勢と実力差はそれほどない。社は04年のセンバツでベスト4に進出した実績があり、近年の夏の甲子園の代表校も、昨夏の市尼崎を始め、13年の西脇工、そして昨春センバツでベスト8まで勝ち進んだ明石商なども、常に県内の上位に進出している。社には体育科があり、運動能力に長けた選手が多いのも事実だが、130校を超える激戦区で、これだけ威勢のいい公立校が多い県はなかなかないのではないだろうか。
昨夏の県大会では準決勝でその同じ“公立の雄”である市尼崎に敗れた。だが、この日は近年県内で圧倒的な力を見せつける明石商に完勝し、決勝に進出した。春の県の頂点を目指し、6日の決勝でも声のパワーでベンチはもちろん、プレーでも相手を圧倒するつもりだ。
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沢井史●文 text by Fumi Sawai