女イチローも感服 元G鈴木尚広が目指した「体の省エネ化」とは

競技をする上で譲れないもの…山田「試合では裏付けがないと結果が出ない」

――2人はどの段階から準備して相手を観察しているのか。

鈴木「ひたすら見ている。今は予告先発が出るので、事前に映像で見て、実際に見て、塁上で見て、見る角度が変われば全然違うものがある。最終的に塁上で見たものが一番大事になる。あとは何回も対戦するので直してくることもある。前と違うかなという差をいつも見る」

山田「ソフトボールは投手の数がチームに4人くらいしかいないので、ある程度、誰が投げてくるかは決まっている。事前に投手の映像を見て試合に臨むという形です」

――両者とも、それぞれの世界の第一線で長く活躍。競技をする上で譲れないものは。

鈴木「いかに失敗をプラスに変える人間になれるかということ。野球もソフトボールも失敗があるスポーツ。同じことを繰り返さないためには失敗そのものを生かさないと。同じケースが出てきた時に前回はどうだったか、それを自分が意識するかしないか。それによって経験が生きて、あの時はこうだったから今回はこうしようと。これも成長。失敗を重ねる中で成長していく。若い頃はそうやっていた。晩年は失敗できないし、立場もあって大変だったので(笑)」

山田「試合では裏付けがないと結果が出ない。普段の練習の一球一球の取り組みから高い意識でやらないと、一番大事な場面で結果を出すことができない。準備力ですね。準備することを一番大切にしています」

鈴木「超一流になれる人は準備をずっと淡々とやるんだよね。結局、たどり着くものはシンプルだと思う。毎日、キャッチボールしたり、打撃練習したり、シンプルなものをいかに続けられるかがすごく大事。それを積み重ねてうまくなる。いかに淡々と継続できるか。イチローさんもそう。どんな人でも、ずっと積み重ねていくというのが大事なこと」

山田「怪我をしないための準備はどうされていましたか?」

鈴木「若い時はすごく怪我をしていた。怪我をしたということは何か足りないものがある。それをすべてクリアしていった。だから、30代になってからは怪我してない。急に走れと言われても走れる体にした。自分の意識で。野生動物って追われている時に肉離れしない。目指すところはそこだった。143試合あると、アップをしていても蓄積疲労は出てくる。そうなると、いかに自分の体を省エネ化して、いざという時に取っておいたエネルギーを向けられるかと。若い頃に目いっぱいにやって、何もしていない状態でも、動いてって言われたら動ける体を作った」

山田「柔軟性を意識してきたんですか?」

鈴木「柔軟性がいいからではなくて、使える筋肉をいかに自分で扱えるかが大事。筋肉は何百個もあって、自分は何%も使ってなかった。そのパーセンテージを上げてあげること。怪我をした部分だけを強くしてもダメ。使える筋肉が多ければ多いほどいい。そういった筋肉を意識してトレーニングしてやってきた。だから力がいらない。怪我もしない」

山田「すごく勉強になります」

鈴木「山田さんには、あと10年くらいやってもらいたい。そうしたら『山田選手みたいになりたい』という子がたくさん出てきて、みんなの憧れの存在になれる。そういう道をこれから作っていける方だと思うので、ソフトボール界をリードしてもらって、魅力を伝えていってほしい。自分でソフトボール界をリードしていると思った方がいい。ちゃんと話せる方だし、もっともっと発信してほしい。『プロ野球選手でもソフトボールで空振りするんですよ』って(笑)」

【了】

フルカウント編集部●文 text by Full-Count

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