新人遊撃手・源田の影響も 好調西武、失点減のメカニズムをデータから探る
源田起用がもたらすゴロの処理状況の改善
ゴロをアウトにする割合を高める上で役割を果たしていると思われる選手を考えた時、真っ先に思い浮かぶのは遊撃手として開幕から全イニングを守ってきたドラフト3位ルーキー・源田壮亮だろう。多くの遊撃手候補を抜き去ってレギュラーを獲得。打撃でも四球こそあまり奪えていないが、打率を3割に乗せプロの投手にも適応しつつある。
源田の守備が非常に効果を生んでいることはデータからも明らかだ。図は内野を等角度で22分割し、各ゾーンに飛んだゴロを母数に、そのうちどれだけをアウトにしてきたかの割合を年度別に集計したものだ。水色の線で示した今年の数字を見ると、遊撃手の守備範囲にあたるH、I、Kの付近で、例年に比べ数字が高まっているのがわかる。三遊間、二遊間に飛んだ打球を高い確率でアウトにしている源田の守備は、失点を減らす上でかなりの効果を発揮していると思われる。
現役時代は守備の名手として知られた辻発彦新監督が、どんな野球を志向するかは今季のパ・リーグの注目点の1つだったが、源田以外にも左翼と右翼に外崎修汰や木村文紀といった打撃はともかく、安定的な守備が期待できる選手を起用し失点をうまくコントロールしている。栗山巧や森友哉にケガが生じたがための起用という側面もあるが、結果的にうまく回っていると言えるだろう。
30日には金子侑司が1軍に昇格。中村剛也やエルネスト・メヒアらの調子が改善し、さらには森の捕手としての復帰がなされれば、今以上に得点力が上積みされる可能性は十分ある。そしてそれは、現状うまくいっている打球処理に大きな影響を及ぼさずに可能な上積みである。
西武が今のレベルの失点率をキープしたまま、さらに得点力を上げることができれば、優勝争いに絡んでくることは間違いないだろう。ここ数年、ポテンシャルについては高い評価を受けながら、優勝争いに絡めずにいた西武だったが、ゴロを打たせる投手陣の資質の発揮と、新たに加わった源田というピースによって状況は変わりつつある。
DELTA http://deltagraphs.co.jp/
2011年設立。セイバーメトリクスを用いた分析を得意とするアナリストによる組織。書籍『プロ野球を統計学と客観分析で考える セイバーメトリクス・リポート1~5』(水曜社刊)、電子書籍『セイバーメトリクス・マガジン1・2』(DELTA刊)、メールマガジン『Delta’s Weekly Report』などを通じ野球界への提言を行っている。集計・算出した守備指標UZRや総合評価指標WARなどのスタッツ、アナリストによる分析記事を公開する『1.02 Essence of Baseball』(http://1point02.jp/)も運営する。
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