光る強肩捕手・甲斐の貢献度 ソフトBの「弱みを消す」という戦力アップ
盗塁を狙われにくくなったソフトバンク
もちろん、盗塁阻止は投手と捕手、そしてタッチする野手の連携によって実現するものであり、ポップタイムがどれだけ速くてもそれのみで盗塁を防げるわけではない。むしろ、盗塁阻止の成否には捕手の送球よりも投手のクイック技術のほうが大きく影響しているとする研究も存在する。それでも、昨季、非常に悪かったソフトバンク捕手陣の盗塁阻止率は今季上昇している。そこに強肩・甲斐の出場機会増がある程度寄与しているのは間違いないだろう。
だが、甲斐が果たしている盗塁阻止以上に大きな貢献は、その強肩のイメージによって、盗塁を狙われるケースを減らしていることだ。走者一塁、また一、三塁の場面で盗塁を企図されたケースの割合を集計すると、ソフトバンクは2014、15年に非常に高いパ・リーグのワースト値を記録。つまりかなり積極的に盗塁を仕掛けられていたが、今季は数値を下げ、他球団と遜色ないものになってきている。
この数値の低下に甲斐が貢献しているのは明らかだ。甲斐がマスクを被ったとき、盗塁を企図される割合はチームの平均の半分強まで下がる。他球団は、甲斐の肩をかなり恐れ、盗塁を自重している可能性が高い。
盗塁阻止率が上がり、盗塁を企図されるケースも減った結果、ソフトバンクが実際に許した盗塁の数も減っている。甲斐がマスクを被る機会がさらに増えていけば、ソフトバンクはリーグ上位の「盗塁をさせないチーム」となるかもしれない。