育成出身が多数活躍、ホークスはなぜ選手が育つのか? 選手の言葉から検証
3軍だけで年間70~80試合を実施、支配下ルーキーや育成選手が実戦を重ねる場
「3軍があることで、僕らは試合に出られますから。他のチームには3軍ってないじゃないですか。巨人くらいですよね。それだと試合にはなかなか出られない。僕らの場合は3軍があって、試合に出られます。その中でアピールも出来るので、その環境がいいのかなと。試合に出て、その中で課題が見つかる。結果が出れば、自信がつく。結果を残してしまえば、2軍で試合に使えってもらえるようになる。数字を残せなかったら……という思いもあったし、そのために練習もしました。試合に出られるというのは大きかったですね」
ソフトバンクは千賀や甲斐が入団した2011年より3軍制を導入し、今季で7年目を迎える(巨人は昨季3軍制を導入して2年目)。2016年には福岡・筑後市にファーム施設「HAWKS ベースボール筑後」が完成。主に2軍が使用する「タマホームスタジアム筑後」だけでなく、3軍が使用する「第二球場」があり、施設、環境面も充実したものになった。また、1、2、3軍の他にリハビリ組があり、3軍はゲームに出られる選手のためとなっている。
現在、ソフトバンクは3軍だけで年間で70~80試合が組まれている。毎年7月前後には韓国にも遠征し、韓国プロ野球の球団との練習試合も行う。徹底的に体を鍛えながらも、実戦の場が与えられることで、モチベーションも維持でき、自身の取り柄や、課題を感じることができるようになっている。
基本的には支配下のルーキー(特に高卒選手)は、この3軍に組み込まれる。育成選手は、12球団の支配下のドラフトで指名されなかった選手。現状ではプロの支配下には力が及ばないものの、体を鍛えれば、大化けする可能性を秘める選手や、一芸に秀でる選手が揃う。
ソフトバンクが年に育成選手を7人も8人も指名するのは、この可能性、将来性を磨くチャンスを与えるためであることはもちろん、3軍が数多く試合をこなすためにも、必要なのだ。これでも、チーム内に怪我人などが出れば、3軍スタッフが試合に出ることだってある。他球団の育成選手にも、実戦の場はあるとしても、ソフトバンクの3軍のように、数多くの育成選手が、年に何十試合という試合に出ることは難しいだろう。
ダイヤの原石となるべき素材を発掘してきたスカウト力もさることながら、この育成システムが、彼らの成長を支えてきている。千賀はプロ2年目に支配下となり、3年目にセットアッパーとして頭角を示した。甲斐は3年目のオフに支配下登録となったが、ブレークは7年目の今季。石川は3年目に支配下となり、4年目の今季に頭角を表した。3軍制が始まり、そのシステムが軌道に乗るまでに数年は必要になる。ソフトバンクはその成熟期を経たことで、育成選手から人材が輩出できるようになってきたのだろう。
(福谷佑介 / Yusuke Fukutani)