U-12W杯で世界一を逃した侍 アンダー世代に見る日本球界の抱える問題
仁志監督「逆シングルでもいいんですよ」
これも、課題ではないか。チームの関係者からは、子供たちに対し、三振やミスを咎め、型破りなプレーを叱責する指導者が多いと聞く。チームの勝利を至上し、フルスイングや型にはまらないプレーを認めない空気があるのだという。それが、ボールにバットを当てにいくだけだったり、スイングが弱いといった”こじんまり”としたプレーにつながる要因となっているのではないか。
さらには、指導者の指導にも異論があるという。例えば、少年野球の世界で良く教わる「ゴロは体の正面で取れ」という教え。体の横に飛んだ打球に対して回り込んで、体の正面で取れと子供時代に教わった野球経験者も多いはずだ。
これに対して、仁志監督は「逆シングルでもいいんですよ。体の正面というのは、常に捕球するときに、グラブが体の面の前にあるということ。逆シングルの時にも、グラブは体の面の前にあるということ。体の正面にグラブを置くということで、回り込んで体を正面に向けなきゃいけないということじゃない。大切なのは取ることではなく、しっかりと送球するために、どうキャッチするか」と否定する。首を傾げたくなる指導が往々にしてあるのだという。まかり通った、凝り固まった指導ではなく、選択肢を与える幅のある指導も必要だという。
「日本の野球界を引っ張っているのはプロ野球ですけど、日本の野球界を支えているのは少年野球。組織的なものも含めて、子供たちのために最善を尽くしたいですね」と仁志監督。プロの一流選手が集うトップチームと同じ侍ジャパンのユニホームを着て、日の丸を背負って世界と戦う舞台に出たくない子供は、ほとんどいないだろう。それを大人たちの思惑、都合によって、妨げられるのはいかがなものか。
仁志監督の言う通り、日本の野球界のトップに立つのはプロ野球である。もっとプロ野球界が先頭に立って、子供への野球教室だけでなく、球界として指導者への講習会を行ったり、球界全体として体系的な組織作り、育成方法、そして運営体制を作ることが必要なのではないか。侍ジャパンU-12代表だけの問題ではない。球界全体が発展していくためにやるべきことが、問われているのではないだろうか。
(福谷佑介 / Yusuke Fukutani)