指導者・松井秀喜氏の今 特別インタビュー(上)「長嶋監督の気持ちが分かる」

ヤンキースのゼネラルマネジャー特別アドバイザーを務める松井秀喜氏【写真:大橋小太郎】
ヤンキースのゼネラルマネジャー特別アドバイザーを務める松井秀喜氏【写真:大橋小太郎】

「英語では毎日苦労している。伝えたいことを伝え切れない」

 練習が行われているフィールドでは監督、コーチと言葉を交わしながら選手の打撃フォームに見入っていることが多い。練習を止めて話しかけることはほとんどない。一方、ベンチに入り、ダッグアウトの最前列でプレーを見守る試合中は、話しかけてくる選手にその都度指示を与える。選手時代とは違い、通訳を介さないやりとりとなる。

「ベンチの一番前で見ていると相手投手のことを聞いてきたりするので、自分ならこういう意識で打席に入る、という風につたない英語で伝えている。マイナーに通い続けてお互いに面識ができたので彼らも話しかけやすくなっているのかと思う。ベンチではそんなに深いことは話さない。技術というより、試合では投手に対するアプローチの話になる。技術指導とは違う投手を攻略するための打席での意識の話。この投手だったらどういう意識で打席に立つかということが大切になってくる。

 英語では毎日苦労している。伝えたいことを伝え切れない。10伝えたいのに6か7くらいしか伝えられないジレンマ。勉強して何とかなる部分もあるけど、感覚的なものは日本語でもなかなか伝わらない。これはアメリカにいる以上永遠のテーマでしょう。自分の思っていることをいかに伝えるかは」

 現役最後の年となった12年にレイズのマイナーに所属したことはあるが、わずか13試合の出場だった。組織の傘下で育てられる他の選手と違い、日本のプロ野球からフリーエージェント(FA)移籍した松井氏は引退して初めてマイナーリーグを深く知る機会を得た。

「マイナーは若い選手の生存競争。競争は残酷なものだ。すぐに首になる残酷さというのは日本にはなかなかないかな。球団幹部はマイナーの勝敗にはあまりこだわっていないと感じる。とにかくいい選手をメジャーに送り込んでくれという姿勢だ。ただその中でも選手はチームで勝利を目指している。個人の競争なのだけど、試合で一丸となって勝利を目指すのは不変なのだと思う。アメリカならではの現実もある。活躍する選手ほどトレードの駒となりやすく、ヤンキースを離れてしまうことが多い。それもマイナーの一部だ。

 日本のファンには想像できないかもしれないが、2Aのトレントンのようにいつも観客がたくさん入ってビジネスとしてうまくいっているチームもある。例えば日本の選手がこの(スタテンアイランドの)マイナーの一球場を見たら、日本の球場と比べて美しさに感動するはずだ。僕はずっといて慣れてしまっているけど、もし日本から来たら何ていい球場なのだろうと感動する。絶対にそう思う。いくらマイナーでもそういった良さはある」

「今こうして指導するときに『だよね』と長嶋監督に共感する気持ちがある」

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