引退試合は「右中間へ大きなフライを」―井口資仁のこだわり、若手への思い
「中堅やベテランを押しのけるくらい若手が成長してこないと、このチームは強くならない」
チームはシーズン序盤から低迷。開幕前から今季限りでの引退を心に決めていた井口にとって、歯がゆさが残るシーズンとなってしまったが、8月27日ソフトバンク戦を最後に1軍登録を外れ、引退試合まで2軍で調整することにした。「来季のことを考えれば、若い選手が活躍するのがいいこと」と若手に道を譲った形だが、そこには少し物足りなさも感じているようだ。
「中堅やベテランを押しのけるくらい若手が成長してこないと、このチームは強くならない。この何年か、レギュラーポジションが確定している選手は、ほとんどいないでしょ。だからこそ、僕らベテランが楽にベンチ入りできる現実がある。僕らがいい場面で出ていくようでは、チームとしてはダメ。そういうことも含め、残りの日々で伝えていきたいですね」
もちろん、プロの世界は簡単に結果が出せるほど甘くない。若手が結果を出そうと努力している姿も知っている。自分も同じ道を歩み、試行錯誤を重ねながら、21年のキャリアを築いた。若手が一皮むけ、1軍に定着するには何が必要なのか。それは一言で言うなら「取捨選択能力」のようだ。
「若い選手が現状で目一杯なのは、よく分かる。その中で、コーチに言われたことをやっても結果が出ないっていう子も多いんですよ。中には、キャンプでやっていたことと真逆なことをやっている選手もいる。でも、コーチはみんな良かれと思って教えていて、悪いことを教える人は誰もいない。そのアドバイスを、自分でどう理解するか、だと思います。
プロの世界。やるのは自分。結果が出なければ、責任を取らなければいけないのも自分。コーチや周りの人から受けたアドバイスを、自分のバッティングと合わせて、自分のいいように理解できるか。人から何か言われると、どうしても自分のやっていることと真逆のことを言われているように感じることもあるんですよ。キャンプで『これで1年いこう』って決めたことは、多少の微調整があっても1年通した方がいい。アドバイスを自分のやり方とうまく合わせられるか。そこがポイントでしょうね」