2季連続甲子園へ、智弁和歌山を成長させる“元主将“の存在「中谷さんはさすが」

4月に中谷コーチが加入「野球で生きていくためには野球全体を見られないとダメ」

 それでも二次予選では和歌山南陵、箕島をコールドで下すなど、圧倒的な力で勝ち上がってきた。エースの平田は甲子園の大阪桐蔭戦で6回途中から登板し、2回1/3を投げ1安打の好投を見せたことも自信に繋がっている。以降は、絶対的なエースとしてマウンドを守ってきた。「他にも投手はいますが、平田が急成長したので大事な試合は平田に任せています」と古宮克人部長も話す。

 4月からチームのスタッフに加わった中谷仁コーチの存在も大きい。阪神、楽天、巨人でプレーした中谷コーチは97年の夏の甲子園で全国制覇した際の主将。捕手としても複数の投手を好リードし、優勝に貢献した。中谷コーチはバッテリーを主に指導をしているが、現チームの正捕手・東妻純平に送るアドバイスも生きている。「ピッチャーへの気配りについては一番よくアドバイスをされます。“野球で生きていくためには野球全体を見られないとダメ”と。中谷さんはそこまで気がつくか、って思うほど周囲を見られている。さすがやなって思います」と東妻も大先輩の言葉に心を動かされているという。

 11年夏の甲子園以降、甲子園での白星が遠ざかっていたが、今夏、6年ぶりに1勝を挙げた。だが、春夏計3度の全国優勝を誇る名門として、現状で満足するわけがない。昨秋の近畿大会では初戦で滋賀学園を相手に壮絶な打撃戦の末、6-13で敗れた。その試合にも出場していた主将の文元洸成は「今日は自分のミスから失点してしまいましたが、切り替えることの大事さを感じました。今年こそ近畿大会を勝ち抜いてセンバツに出場したいです」と前を見据えた。

 この日放ったヒットは15本。この秋はエースの平田が安定し、かつて先輩が甲子園で見せつけてきた打棒が復活しつつある。「現時点では智弁和歌山が頭ひとつ抜けている」と県内の関係者がささやいており、かつての常勝時代の雰囲気が漂っている。“豪打・智弁和歌山”の見出しが、今秋以降、幾度メディアを飾ることになるだろうか。

(沢井史 / Fumi Sawai)

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