価値“再上昇”の田中将大、ヤンキース退団の可能性は? NY紙名物記者が分析
田中の「ヤンキース愛」もポイントの1つに
鍵となりそうなのは、初年度に長期離脱の原因となった肘の状態に対する判断だ。田中は右肘靭帯部分断裂で約2か月半の離脱を経験。保存療法を選択し、靭帯再建手術(通称トミー・ジョン手術)は受けなかった。当初から、手術を必要とするほどの重症ではなかったとされており、実際にその後は肘の不安を感じさせるようなことはないが、それでも懐疑的な見方は未だに強い。
シャーマン記者は第1のポイントで「タナカはワールドシリーズが終了してから3日以内にオプトアウトするか残留するかを表明しなければならない」と指摘している。「それまではヤンキースの一員であるため、ルールにより彼の代理人は他球団と話したり、特に肘に関しての医療上の情報を送ったりしてはならない」。つまり、肘の状態を不安視している球団があるとすれば、それを確認する時間はないというのだ。
一方で、田中の肘の不安を払拭するデータもある。それは、先述したように負傷後に健康状態の面では順調なシーズンを送っているということ。2つ目のポイントでは「タナカは2014年途中に肘内側側副靭帯の部分断裂が明らかとなり、トミー・ジョン手術が待ち受けているように見える。しかし、2015年から2017年にかけて、レギュラーシーズン85試合で先発しており、この2年間ではアリエッタと同数で、ダルビッシュより13試合多い61試合に先発している」と分析している。シャーマン記者は「MRIなどを見た後に各球団がどう動くかは謎だ」とも付け加えているが、果たしてどんな動きがあるのか。
3つ目のポイントは、田中の「ヤンキース愛」だ。「タナカはヤンキーであることをエンジョイしているように見える。また、毎年王者になるためプレーできる時期だと感じるだろう。これは彼がオプトアウトするかどうかに影響するだろうか?」。メジャー随一の名門球団でのプレーは、多くの選手にとって憧れだ。昨オフ、FAとなっていた剛腕チャプマンは、ヤンキースでプレーできる喜びを一番の理由に掲げ、“出戻り”を選んだ。
このポストシーズンで、田中は圧倒的な勝負強さを発揮している。選手の目の色が変わる10月の戦いで、メジャーの猛者と対峙し、抑え込むことに最高の喜びを感じているようにも見える。この痺れるような戦いを多く経験するために、常勝を義務づけられたヤンキースでプレーすることは近道となる。若手の台頭で低迷期に終止符を打ち、新たな黄金時代を築こうとしていることも決断への大きな要素となりそうだ。