貴重な経験と選手との絆 プロ野球球団の通訳に求められる重要な要素とは?

島田球団代表も通訳経験者、ウィンタース氏をサポート

 水原氏は米国でビジネスの世界に身を置いてから野球界へ転職したことに対し、「とまどいは全くなく、うれしい気持ちでいっぱいだった」と語る。これまでの長い海外生活を生かし、異国で暮らしていく選手たちのサポートに奮闘することを楽しみにした。

 ファイターズには岩本賢一氏、さらには当時先輩通訳だった佐藤通訳(現ロサンゼルス・ドジャース通訳)と困ったときにはなんでも聞ける存在が周りにいた。最初は右も左も分からない世界だったが、既にシアトル・マリナーズでも通訳の経験を積んでいた佐藤氏が直接、指導にあたってくれたのも心強かった。

 通訳の仕事といえば、ヒーローインタビューやマウンド上での姿を思い浮かべる方が多いかもしれないが、通訳にとって周囲の目に見える仕事は10%にも満たないと、水原氏は言う。

「フィールド外の私生活の方をしっかり抑えないと信頼を得ることはできない」と、シーズン中は自分の時間を犠牲にしてでも選手や家族を第一に考えることが重要だと語る。自分の時間を惜しまず、選手に捧げるぐらいの気持ちがないと通訳は務まらないのだ。

「外国人選手が活躍したときもそうですが、ファイターズに来て良かったと言ってもらえるのが一番うれしい。とにかく後悔だけはして欲しくないという気持ちを常に持っています」

 北海道日本ハムファイターズには通訳経験者が現在も多く所属しており、現在球団代表を務める島田利正氏もキャリアのスタートは通訳だった。当時担当を任されたのは1990年から1994年までファイターズの一員として活躍したマット・ウィンタース氏だ。ファイターズでは通算160本の本塁打を放ち、オールスターにも2度選出されるなどチームに大きく貢献した。そして今、ウィンタース氏はファイターズの国際スカウトとしてチームに残っている。それは通訳の存在が後悔のない経験を生み出したからこそ、続いている関係ではないだろうか。

ウィンタース氏「私にとっては外交官のような存在」

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