中村紀洋氏インタ(下)子供たちに注ぐ情熱、NPBオファー来ても「行かない」
「プロでもつかめないまま終わった人がいっぱいいる」、求めるのは量より継続
指導方法はシンプルだ。真新しいことを推奨するわけではない。選手それぞれに合う方法があるため、そこは崩さないように注意する。思考が整えば、あとはどう積み重ねるか。
「天性のものなんて絶対ないから努力する。努力することによって何かをつかめます。それをつかんだらいつでも打てるようになります。でも、それは誰も教えてくれないので、プロでもつかめないまま終わった人がいっぱいいました。自分はつかめたから、長くできた。誰も助けてくれないので、やると決めたらとことんやる。プロも簡単な世界ではなかったので、自覚を持って、何事も自分でチャレンジして解決しない限りは絶対に成功できない」
求める努力は、量ではなく継続にある。「『1万回も振らないでいいから。30球だけ思い切り振って、それを毎日続けてみよう』と教えています」。育みたいのは、諦めない心だ。
「当時の感覚で指導をすると毎日、腹が立つと思います。だから、プロのOBがアマチュアを教えても、できないものだと思って接しています。できたら褒めて、絶対にけなさない。『こんなこともできないの』というのはプロ野球OBの大体の感覚です。できない時はもっと分かりやすく言えば、自分の勉強にもなる」
自分たちの時代とは違うから、適応する。中村氏も学びの最中だ。ただ、責任を持って子供を預かった以上は譲れないこともある。
「僕らの時代に比べて、親御さんが甘い部分もあると思います。今の中学生、高校生ぐらいの年代は自分でバッグや道具を持たない。野球をするだけでグラウンドの整備をしない子もいますし、親が代わりにすることもある。それじゃあ、あかんと。使った物を大切にして、感謝の気持ちを持ってやらない限りはうまくならないことも教えています」
「挨拶ができない子が多いから、挨拶ぐらい簡単にしようよと。朝に『おはようございます!』と声に出すだけで、お互いが気分よく1日を過ごせるじゃないですか。きっちりした挨拶と礼儀。礼に始まり礼に終わる。それはもう基本ですからね」
今、中村氏の原動力となっているのは、野球への感謝の気持ちだ。現在、野球が直面している問題にも思いを巡らせる。