イチローら指導の名コーチが野茂氏の推薦で渡米 メジャーで伝える打撃論とは

「ホームラン打者が増えたわけじゃない。そこを考えてみても…」

「やはりメジャーではホームランが花だし、注目されますが、40本、50本と打つ人数が増えたとは思いません。1桁が2桁になったとか、10本台が20本になったとか、そういう全体的なホームラン数が増えたのであって、いわゆるホームラン打者が増えたわけじゃない。そこを考えてみてもいいんじゃないかな、と思うんですよ。

 それだったら、的確なコンタクトを目指す打撃を目指す方が、打率は上がり、三振が少なくなり、最終的には同じくらいのホームランが出ると、僕は思います。この春にメジャーキャンプに入っている選手の練習を見ても、メジャーで数多く打席を積んでいる人の方が、結構レベルスイングに近い動きをしていましたね」

 パドレスは、今季から打撃コーチとして元中日のマット・ステアーズを招聘した。ステアーズとも打撃論を交わした新井氏は「すごく正しいことを言っていると思いますね」という。

「彼の言っていることはオーソドックスでシンプルです。まずは出塁して走者を返していこうという考え。選手の中には、パワーを見せつけるのが打撃だと思っている人もいます。パドレスに限らずメジャーやマイナーの打者は、バットを構えた時から力一杯握りしめて、ボールが来たら『よしっ!』と振り出しから力を入れすぎていることがかなり多い。そういう打者に、ステアーズは『リラックスして構えながら、ボールがバットに当たる少し前からグッと入れるのがパワーだよ』と教えていました」

 この春は約2週間という短い滞在期間。「来させてもらったのに、それなりの仕事ができたか分からないんですけど」と謙遜するが、新井氏がパドレスのキャンプで指導したことは、打撃で悩む若手選手たちに新たな方向性を与えたに違いない。

(佐藤直子 / Naoko Sato)

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