時代の変化にコミットした指導方法 智弁学園監督の“コミュ術”とは
選手の誕生日を携帯電話に登録「親身になってあげられることはやってあげたい」
毎年入学するのはだいたい20人前後だが、名前と顔を入学前に覚えるのは当然のこと。そして選手の誕生日を携帯電話のカレンダー機能に登録し、誕生日当日は必ずおめでとうと声を掛ける。練習でうまくいかなかった子や、その日怒ったまま終わった子がいれば、小学生の息子と共に食事や銭湯に出かけることもある。「寮生活の子は親元を離れているし、親身になってあげられることはやってあげたい」と父親のような温かい気風も見せる。
主将の小口仁太郎は言う。
「僕たち1人1人を気に掛けてくれるし、怒る時は感情的になるのではなく、怒る理由を自分たちにしっかり伝えてくれます。だからなぜ怒られているのか自分たちで理解しやすくて、翌日からは良い意味で力を入れすぎずに取り組もうと思えます。そもそも、悪いことをしなければ怒られないんですけれど、自分たちと正面から向き合ってくれる。誰かに偏ることもなく全員に話してくれるし、とてもやりやすい環境を作っていただいています」
3年連続のセンバツ出場。「選んでいただける大会で、こうやって出ることができるのは光栄なこと。就任最初の頃は苦しい時期もありましたけれど、部長やコーチにも助けられましたし、自分ひとりではできないこと」と周囲への感謝しかないと言う。
甲子園常連校ながら、なかなか全国上位に勝ち上がれない時期もあった。
「何とか優勝しないと、というはやる気持ちもあったけれど(16年センバツで)優勝してからは違うプレッシャーはありました。去年のチームの選手は優勝した前チームからの経験者も多くて、気持ちが強すぎて空回りしてしまっていましたね。でも、求められるものが大きい分、成長はしていける。今年のチームは物静かなチームですけれど、だからこそやれることをしっかりやって本番に臨みたいです」
今や、高校野球界の若い指導者を代表する監督の1人となった小坂監督。指導者として区切りとなる10度目の大舞台となる今春のセンバツではどんな采配を見せてくれるのか注目したい。
(沢井史 / Fumi Sawai)