「僕らがどれだけ彼から力をもらったか」― 今も広島に息づく黒田博樹の流儀

広島・石井雅也ヘッドトレーナー【写真:小林靖】
広島・石井雅也ヘッドトレーナー【写真:小林靖】

チームに根付く意識

「チームの雰囲気が大きく変わりましたね。彼がいるだけで違いました。日々野球に取り組む姿勢であるとか、試合に挑む姿が言葉では無く感じられるものがありました。多くのチームメイトはあれだけの選手にはなかなか巡り会えない。2年間一緒の時を過ごせたのは財産だと思っています」

 ヤンキースからFAとなった際はパドレスから年俸1800万ドル(当時のレートで約21億7000万円)のオファーがあったとの現地報道もあった。そんな好条件を断り、広島に復帰した黒田氏は若手の教育係を務めた。メジャー79勝という実績を誇りながらも、自分の意見を押し付けるような態度は取らなかった。苦しんだ時に、言葉をかけた。黒田氏はアドバイスのタイミングを常に見計らっていたという。

 言葉だけではない。背中でチームを引っ張った。「彼は誰よりも早く球場に来ていました。12時くらいには、彼はトレーニングルームでウォームアップしていました。ストレッチやアスレティックリハビリテーションに黙々と取り組んでいました。それは自分のためという部分と、準備がいかに大事かというのを周りに伝えたかった様に思います」。

 チーム最年長でありながら、どんな若手選手よりも球場に先乗りしていた右腕。行動で示すことで後輩たちを引っ張り、自身も40代で2年連続2桁勝利というNPB史上3人目の偉業を達成した。そして最終的にチームを25年ぶりのリーグ優勝に導いて引退。まさにレジェンドという言葉がふさわしい存在だ。

2006年のエピソード、「誰もが驚きました」

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