“松坂効果”を一過性で終わらせないために――中日が取り組むべき「これから」
潜在ファンは少なくない中日、ドームから離れた足をいかに呼び戻すか
昨季からナゴヤドームには「106ビジョン」と呼ばれる超巨大オーロラビジョンが導入された。2016年まで1面だったオーロラビジョンの両サイドに、新たに高画質のオーロラビジョン2面を設置。3面構成で全長約106メートルに及ぶ、セ・リーグ本拠地で最長最大の“超巨大スクリーン”とした。大迫力かつ圧巻のビジョン演出が可能になったのだから、これを利用しない手はない。オフにはフルカラーのLED照明も導入され、色彩豊かな多種多様なスタジアム演出もできるようになった。揃ったハードをどう生かすかは、球団の“腕”にかかっている。
決して、中日はファンが少ない不人気球団ではない。名古屋を中心とした地域にしっかり根差している。故星野仙一氏が指揮を執った1997年には年間観客動員は260万人超。2000年前後も年間230万人から240万人の動員があり、阪神を上回り、巨人に次ぐセ・リーグ2位の観客動員数を誇っていた時期もある。ほぼ毎年のように優勝争いを繰り返した落合博満監督時代も、年間230万人前後は入っていた。
かくいう私も名古屋出身で、幼少期はナゴヤ球場やナゴヤドームに数多く足を運んだ身だ。チームが遠征に出ても、数多くの中日ファンが敵地まで足を運んだ。チームとしての魅力が薄れたことで、ドームから足が遠のいているだけで、潜在的な中日ファンは多くいるはずだと思う。ただ、チームが勝てなくなったから観客が減ったという単純な話ではなさそうだ。勝敗を差し引いた部分でも、魅力ある球団でなくなっていったということだ。
スターがいない、全国区はドアラだけ、と揶揄される。だが、大島洋平は球界を代表する外野手であり、次期エースの小笠原慎之介、昨季新人王に輝いた京田陽太、今季ドラ1ルーキー鈴木博志といったスター候補は多い。それが広く全国に知られていないだけで、必ずしもつまらないチームだとは思わない。こうした魅力をメディアを利用しながら伝えていくことも、球団が取るべき1つの方策かもしれない。
様々な取り組みによって観客動員をアップさせてきたDeNAや広島などはいいお手本だろう。中日にとっての“松坂効果”はキッカケに過ぎない。キッカケにしなければならない。これを未来につなげていかなければ、松坂と契約した意味も半減するのではないだろうか。
(福谷佑介 / Yusuke Fukutani)