広島に“不足”する左腕、鍵握る3投手 OB大野豊氏「計算できれば投手王国に」

デビューから活躍続けるフランスアは「掘り出し物」

 さらに、ここにきて面白い存在が現れた。カープアカデミー出身で、5月20日に支配下契約を勝ち取ったヘロニモ・フランスア。ブルペンでの役割が主であるが、5月26日の中日戦にはプロ初先発も経験。大事な場面での登板が次第に増え、目に見える結果を出している。

「結果を残さないといけないので、毎日、必死にやっている。まだまだ自分で納得できる投球はできていない。少しずつでも上達して、広島の勝利に貢献したい。自分としては将来的にはやはり先発でローテーションに入れるような投手になりたい。そのために必要なのは集中力。どんな状況でも集中して投球できるようにしないと、日本の打者のレベルは高いので抑えることはできない。そこを課題にしている」

 大野氏は言う。

「高橋、中村はもっと頑張って早くローテーションの一員として結果を残せるようになってほしい。それだけの能力は十分にあると思う。フランスアは言葉は良くないかもしれないけど、掘り出し物というか、本当に良い投手。日本の野球にもっと慣れてくれば、先発も後ろもできる、チームにとって大きな存在になれる可能性がある」

「個人的な意見だけど、左投手でシュートを投げる投手がいない。ほとんどの左腕がスライダー系とチェンジアップを投げている。右打者の外、左打者の内側に思い切ってシュートを投げられれば大きな武器になる。高橋は時折、そういう球が行くし、中村はシュート(ツーシーム)を覚えた。それらをしっかり投げられればもっと確実に抑えられると思う。フランスアを含めた左3人が計算できるようになれば、本当に投手王国になると思う」

 400勝の金田正一(元国鉄、巨人)、300勝の鈴木啓示(元近鉄)。MLBでも363勝のウォーレン・スパーン(元ブレーブス)や記憶に新しいランディ・ジョンソン(元マリナーズ他)。洋の東西を問わず、球史に名を残すサウスポーは多い。どの時代でも言われることであるが、左腕は有利であり、大きな可能性を秘めている。

 ここ数年は右投手中心であるが、それも巡り合わせにすぎない。なぜなら広島には名投手を生み出してきた伝統が存在する。現在のローテーションに強力な左腕が入ってきた時こそ、真の投手王国ができあがる。そしてその先にある、長年待ち望んでいた「日本一」という3文字が現実味を帯びてくる。

(山岡則夫 / Norio Yamaoka)

山岡則夫 プロフィール
 1972年島根県出身。千葉大学卒業後、アパレル会社勤務などを経て01年にInnings,Co.を設立、雑誌Ballpark Time!を発刊。現在はBallparkレーベルとして様々な書籍、雑誌を企画、製作するほか、多くの雑誌やホームページに寄稿している。最新刊は「岩隈久志のピッチングバイブル」、「躍進する広島カープを支える選手たち」(株式会社舵社)。Ballpark Time!オフィシャルページ(http://www.ballparktime.com)にて取材日記を定期的に更新中。

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