【日本S】驚愕の4戦連続盗塁阻止 阻止率10割の“甲斐キャノン”に隠された秘密
スローイングに移行しやすいよう、ミットは極めて浅い
以前に、これの意図を明かしている。「一歩踏み出すことで、二塁がよく見えるようになる。その場でステップすると体がブレて目線もブレるんですが、左足を踏み出すことで体がブレにくくなります」。少しでも送球が逸れれば、盗塁を刺せる確率はグッと低くなる。強肩だけに頼らず、正確なスローイングを生み出すために導き出された甲斐なりの“一工夫”だった。
さらには、甲斐のキャッチャーミットは、最大の武器であるスローイングを生かす構造になっている。甲斐が愛用するミットは尊敬する西武・炭谷銀仁朗から譲り受けたもの。3年前に話したことも、面識もない炭谷にいきなり話しかけ、ミットを譲ってもらえないか、懇願したという。
球界を代表する捕手の炭谷は、この甲斐の願いを受け入れ、キャッチャーミットをプレゼントしてくれた。その時のものを、今も使い続けているが、このキャッチャーミットはとにかくポケット部分が浅い。少しでもキャッチングのタイミングがズレると、ミットから溢れ出てしまいそうなほどだ。
甲斐自身が「キャッチングはめちゃくちゃ難しいです」と評するほどのミット。それでも、その浅いミットを使い続けるのは、ボールが握りやすく、キャッチングからスローイングにスムーズに移行するためなのだ。全ては自信を持つ“肩”を生かすため。難しいキャッチングは繰り返し基礎練習を行い、精度の向上に努めてきた。
ただ、肩が強いだけじゃない。自身の強みを生かすべく、二重、三重に工夫を重ねている。これぞ、プロフェッショナル。広島を驚愕させた“甲斐キャノン”には、25歳がプロで生き抜いていくための技術と工夫が詰まっている。
(福谷佑介 / Yusuke Fukutani)